米Adobeによる買収で話題を集めたデザインコラボレーションツール「Figma」。2022年1月に日本法人Figma Japanも設立しており、国内での展開も加速している。中でもユーザーコミュニティーの重要度は高いといい、川延浩彰さん(カントリーマネージャー)は「会社としても大事だと思っている。日本でできることはまだまだある」と話す。
2年目を迎えたFigmaの日本展開は、今後どのように進むのか。Figma Japanが3月14日に竹芝ポートシティで開いたイベント「デザイン経営2023ー“Great DX is not done without Great Design” デザインなくしてDXは成り立たないー」の場で、川延さんに聞いた。
Figmaは公式ユーザーコミュニティーとして、世界各地で「Friends of Figma」という集まりを運営している。それぞれ都市とひも付いており、例えば日本の場合は「Friends of Figma Tokyo」というコミュニティーが存在する。具体的な規模は非公開だが、各コミュニティーはゲーマー向けチャットツール「Discord」などで活動しており、ユーザー同士がコミュニケーションを取ったり、イベントで交流したりしている。
公式コミュニティーでは例えば、他ツールからFigmaに乗り換えるときの知見をイベントで共有したり、ユーザーからの質問に直接答えたりしているという。SNSなどでは他にも、非公式なユーザーコミュニティーが見られる。
一連のユーザーコミュニティーが担う役割について、「FigmaはCommunity-led Growthモデルだと思っている」と川延さん。Community-led Growthは、企業がユーザー同士のコミュニケーションを支援してコミュニケーションを形成し、その活動を新規顧客獲得やビジネス活性化につなげる考え方だ。
「コミュニティーのユーザーがFigmaを使ってポジティブな体験をし、それを発信することによって新しいコミュニティーができたり、大きくなったりする。コミュニティーがそういった形になればいいなと思っている」(川延さん)
ユーザーによる発信の強化に向けては、コミュニティーとは別方面からのアプローチも取っている。例えば、国内企業の事情に合わせた組織体制の最適化だ。
そもそも日本のユーザーは、海外に比べるとサービスへの要求が異なるという。例えば「日本のエンタープライズユーザーはセキュリティを大事にするので、懸念に対応できるようソリューションエンジニアを入れた。他にも、ユーザーとのコミュニケーションがほぼ100%日本語になることから、サポートの体制も整えた」という。これによりユーザーの体験を改善し、発信されやすくしたわけだ。
「Figmaは、日本上陸の前から英語で使っていた人も多い。これまでは、そういった方々がユーザーのポジティブな体験を広げていた。ただ、これまで以上にマーケットに向き合って、プロダクトだけでなく体制もローカライズすることで、より多くの人々にポジティブな体験をしてもらえればいいなと考えている」(川延さん)
一方で、コミュニティーと関わるに当たって注意している点もあるという。コミュニティーのあらゆる活動に企業として関与してしまうと、自発的な活動だからこその良さが損なわれてしまうリスクもある。「全てに関与する必要はないが、全部をユーザーにお任せしてしまうのも違う。自発的に盛り上げてもらう良さを大事にしながら、場合によってはサポートできるところはしていきたい」(川延さん)
今後は、引き続き日本に合わせた体制作りを進めていく方針だ。「上陸して1年そこそこなので、まだ体制の強化を図っている段階。コミュニティーの接点で出会うのはエンタープライズだけとは限らないので、ユーザーと向き合うリソースも強化しないといけない」(川延さん)
とはいえ、ユーザーが体験する部分を改善するだけでは、発信の部分は伸びない。「やはりコミュニティーと向き合うリソースも強化しなければならない」と川延さん。コミュニティーの拡充について「『Friends of Figma Kyoto』や『Friends of Figma Nagoya』があってもいい。コミュニティーはグローバルにも存在し、特にコミュニティー同士のつながりにも制限はない。そういった方々にもコラボレーションしてもらうことで、双方が育っていければ」とコメントした。
ユーザー体験の改善やコミュニティーの強化を進めるというFigma Japan。ただ、ユーザーとの間にわだかまりがないわけではない。それは親会社になる可能性があるAdobeの存在だ。米Bloombergによれば、米司法省はFigmaの買収を発表したAdobeに対し、独占禁止法違反の疑いがあるとして訴訟の準備を進めているという。SNSでは、Adobeによる買収で生じるサービスへの影響を不安がるユーザーも見られる。
川延さんはユーザーの反応は把握しているといい「反応があるのはナチュラルなこと。発表当時に話した通り、FigmaはFigmaであることをきちんと証明しないといけない。われわれとしてもユーザーに向き合っていきたい」とコメントした。
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