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ソニーの人工衛星「EYE」に不具合、宇宙から撮影するサービス再検討へ それでも「失敗とは捉えていない」理由

» 2023年04月14日 18時00分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 一般のユーザーが人工衛星のカメラを自在に動かし、宇宙から見た地球や遠い宇宙の画像や映像を撮影できる──ソニー、JAXA、東京大学の「STAR SPHERE」プロジェクトに黄信号が灯った。13日付けの会員向けメールマガジンで人工衛星「EYE」に不具合が生じたと報告したのだ。ソニーに現状と見通しを聞いた。

「STAR SPHERE」プロジェクトの人工衛星「EYE」イメージ図
メールマガジンの内容

 ソニーによると問題が起きたのは人工衛星の姿勢制御を司るリアクションホイール(reaction wheel)と呼ばれる機構。トルクの反力で角運動量を発生させる一種のアクチュエーターだが、X軸/Y軸/Z軸を制御する部分のうち1つに電源が入らなくなった。

 EYEは磁気トルカと呼ばれる電磁石と地球の地磁場を干渉させて姿勢を制御する機構も備えているため、太陽光パネルを太陽に向けて充電するなど基本的な姿勢制御には問題ない。しかし姿勢制御の速度は落ちるため、発表時に公表したような利用者が任意に衛星を動かすといった場面では「一部動きに制約が出る」という。

 また姿勢制御が遅くなることで、アンテナを地球に向けて通信を行う際の効率も落ちる。これにより通信時のデータ量が制限され、例えば動画の撮影時間が短くなる可能性もある。

2月中旬にEYEがテスト撮影した写真(出典:ソニー)

 ソニーは「楽しみにしていただいているお客様には大変申し訳なく思っている」とし、当初予定していた2つの撮影メニューを見直す考えを示した。しかし同時に「計画自体が失敗とは捉えていない」という。

 「EYEのカメラは健在で、ズームも行える。効率は良くないが衛星としての動作にも問題はない。当初計画していた形とは異なるものの、(利用者に)どのような“感動体験”を提供できるか議論を続けている」。内容が固まり次第、公式サイトなどで公表する考えだ。

 EYEはJAXAの協力のもとソニーと東京大学が共同開発した超小型人工衛星。ソニー製の高感度フルサイズカメラを搭載し、地上から専用のシミュレーターを介して遠隔操作、大気のない宇宙空間ならではの静止画や動画を撮影できるとしていた。

 EYEは1月3日に米国フロリダ州から打ち上げられ衛星軌道上へ。2月17日にはテスト撮影に成功し、3月13日には水レジストエンジンの動作確認を無事に済ませていた。

このような写真が一般の人でも撮影できるサービスを予定していた

【訂正:2023年4月14日19時36分更新 ※メールマガジンの内容に誤りがあったので画像に変更しました】

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