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バード電子のパームレストだけが、なぜ魅力的なのか分かりにくいけれど面白いモノたち(1/4 ページ)

» 2023年04月17日 21時38分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 パームレストと呼ばれるキーボード用の周辺アイテムがある。キー入力時の手首の負担を軽減するため、キーボード手前に置いて、キーボードと机の段差をなくして、手首の固定を楽にするための製品だ。

バード電子「HHKB用タイピングベッド(ふせんポケット付)」5500円。現時点での、バード電子製パームレストの最新作

 パームレスト自体の歴史は古く、かつては座布団のような小型のクッションを使ったり、セルスポンジ製のもの、ゲル状の素材を使ったものなどが作られていた。そして今、筆者にとってパームレストといえば、バード電子による「HAPPY HACKING KEYBOARD」(以下、HHKB)専用の木製タイプだ。

 バード電子がPFU製品向けのオプション製品の企画を始めたのは2008年ごろ。しかも代表の斉藤安則氏によると、それはPFUから依頼があったというわけではなく、斉藤氏が自分も欲しくて勝手に作ったのだそうだ。

 元々、バード電子は、あまり一般的ではないけれど、あるとうれしい製品を作るメーカーとして一部では古くから有名だった。特に、ノートPCの熱暴走を抑えるための冷却台「インタークーラー」シリーズは、バード電子の発明品ともいえる製品。ノートPCが高性能化し始めた頃、特にIBMの「ThinkPad 535」とAppleの「Powerbook 2400」は、熱くなることで有名だった。それをどうにかするために1998年頃に作ったのがインタークーラーの第1号機だった。

バード電子の「インタークーラー」シリーズ初期のカタログ。ノートPC用冷却台として商品化された、世界初の製品だった。シリーズ後期の「GTX」はプロダクトデザイナーの中林鉄太郎氏によるデザインで、グッドデザイン賞を受賞

 一時期は、多くのメーカーから発売されていて、夏場のノートPC使いの必需品とまでいわれていた冷却台。かつては今や家電メーカーになったバルミューダでも作っていたほどだが、これを世界で初めて商品化したのは、実はバード電子なのだ。

ADB端子から電源をとれた画期的な「POKE」

 バード電子が最初に製品化したPC周辺機器に「POKE」というシリーズがある。その最初の製品「POKE101」は、1つのマウス、1台のキーボードを、2つのPC間で切り替えて使うためのセレクターだった。

 「これ、電気で動くんだけど、電源が要らなかったんです。これ、PS/2端子とADB端子を使うんですけど、どちらの端子からも実は電源を取れたんです。マック用のADBは、どのくらいの電気が来ているのか不明だったので、自分で調べました。マウスが動く端子だから、電気が来ていることは知られていましたが、何アンペア取れるのかとかは分からなかったんです。それで調べていて、ADBポートを1つ壊したりしながらも詳細が分かったので、POKEの1号機を作ったんです」と斉藤氏。

 しかも、この機器はPCの再起動が不要だった。ほとんど現在のUSB接続みたいなことを1995年当時に実現したのだから、それは売れる。

バード電子の「POKE」シリーズは、バード電子の初めてのコンシューマー向けPC用品だった。電源をPS/2やADBなどのポートから直接とる画期的なデスクトップツール

 このPOKEシリーズをきっかけに、斉藤氏が考えたのが、仕事環境を快適にするデスクトップ・ツールを色々と作ることだった。

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