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バード電子のパームレストだけが、なぜ魅力的なのか分かりにくいけれど面白いモノたち(3/4 ページ)

» 2023年04月17日 21時38分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 実は、木製パームレストは、革張りだけでなく、無垢材で作るだけでも、とても大変なのだ。バード電子には、ウォールナット製のパームレストの検品ではねた(=不合格)ものが大量に積まれている。これらは、基本、廃棄されることになる。

無垢材は歪みやすいため、あまりにも大量に不良品が出るウォールナットのパームレスト。その検品ではねたものを使って作った豪勢な台車が、バード電子で活躍中だ

「丸太から切り出した角材の段階で十分乾かしたものを選んで加工してもらうんですが、それでも、反ってしまうものがかなりの数出るんです。しかも、それは、パームレストの形に加工しないと分からないんです。だから、今、検品は全部僕が自分で行っています。あまりに大変だから、ウォールナットで作るのは止めようかと考えたりもするのですが、人気あるんですよウォールナット」と斉藤氏。

 メープルにローズウッドを重ねた二層タイプは、さらに大変なのだという。2種類の木材は当然ながら反り方が違うため、ひどい時は板がねじれたりもするそうだ。

「ローズウッドは人気ありましたけど、一応、生産終了です。やっぱり作るの大変なんです。ただでさえ無垢材は難しいですから。ただ、最初はともかく、いい木を扱う業者と付き合い始めてからは、木をちゃんと選ぶようになりました。白いタイプは何が何でもメープルを使いたいとか、メープルと来たらローズウッドだとか、完全にギターから発想が来てます。インタークーラーやエジソンは車の色で統一してます。その時に凝っていることに影響されますね」と斉藤氏。

筆者も愛用している、バード電子製のメープルとローズウッドを貼り合わせたタイプのパームレスト。現在は販売を終了している
ウォールナット(上)とプライウッド(下)の小口部分。プライウッドはベニヤ板を重ねて作る合板なので、小口が板の層になっている

 その斉藤氏が、パームレストの次の素材として、プライウッドを選んだのは、ミッドセンチュリーの家具の影響だという。元々は、あまりに無垢材を扱うのが大変なので、歩留まりの良い素材にしたいと考えて、加工しやすく反ったり伸縮したりが少ないプライウッド、つまり合板を使うことにしたのだそうだ。

 「プライウッドの良い板が手に入るので、それでテーブルを作ったんです。自分用ですけど、白く塗られた厚手の合板は、小口の層になった模様がとてもキレイで、こういう感じをパームレストに取り入れたいと考えました。プライウッドにメラミン貼ったものをやりたいなと思ったんです」と斉藤氏。

 しかも、無垢材だと、場合によっては半数が検品ではねられることもあるのに比べ、プライウッドは9割近くが合格する。検品ではねられるのは反りよりも、傷や変な木目の場合がほとんどだ。しかし、これまでは、製作が難しい無垢材だったからこそ、他社のパームレストや模倣品とは差別化ができていた。バード電子の品質でウォールナットのパームレストをあの価格で製品化するのは難しいのだ。しかし、プライウッドなら簡単だ。合板の品質はピンキリなのだが、小口の美しさなどを気にするユーザーはそれほど多くないだろう。

 「だから、パクられ防止というか、少しインパクトがあるものにしようと思って、最初は、形を変えてみたんですけど、ただ形を弄るだけでは意味がない。それで、ノートPCの上にHHKBを乗せる、いわゆる『尊師スタイル』で使う人用に、トラックパッド部分を空けたタイプを作りました」と斉藤氏。

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