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楽天のKDDIローミング強化で4Gは“非競争領域”に 各社の競争の舞台は5Gへ房野麻子「モバイル新時代」(3/3 ページ)

» 2023年05月18日 12時36分 公開
[房野麻子ITmedia]
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 キーになるのが5Gだ。5G端末を利用するユーザーは4Gユーザーよりもデータ通信量を2倍以上使うという調査結果もあり、5Gエリアの充実がARPUの上昇、引いては収益につながる。データを消費しているのは動画だ。

 KDDIの高橋社長は「5Gにはキラーアプリがないとおっしゃる人もいるが、絶対そんなことはない。そのアプリ・コンテンツは明らかに動画系。動画配信だけでなく、若い人は当然TikTokなども使う。これは明らかなキラーコンテンツ」と語っている。以前、ドコモの井伊社長も、年配の人がYouTubeを見てたくさんのデータを使うようになっているという趣旨のコメントをしていた。いつでもどこでもパケットがスムースに流れ、動画を快適に見られる・アップロードできる環境を提供することが、さらに重要になっている。

 楽天モバイルも5Gエリアの拡充を急ぐ必要がある。楽天モバイルは他3社よりもARPUが低く、収益を上げるには契約者数を増やすとともにARPUを上げることも必須だからだ。三木谷氏は以下のように語って楽天モバイルの完全仮想化ネットワークの強さをアピールしていた。

 「(現在の4G基地局の多くは)5Gを考えた上でロケーションを決めている。(5G基地局用の)新しい設置場所の獲得はほぼ必要ない。周波数帯が違うので基地局のアンテナを付けなくてはいけないが、4G基地局に5Gのアンテナを付けてソフトウェアをアップグレードするだけで4Gから5Gにアップデートできる。追加投資のコスト構造が他社と圧倒的に違う。これが仮想化技術のミソ」

 また、楽天モバイルの共同CEOで、楽天モバイルのネットワーク構築やグローバル展開を担っている楽天シンフォニーのタレック・アミンCEOは、ネットワークが自律的でネットワーク運用に必要な人員が非常に少なく済むことなどの利点も挙げ、「とても自信がある」と語っていた。お手並み拝見といったところだ。

 新ローミング契約による新たなRakuten最強プランはユーザーにとって大きな魅力。パートナー回線「エリア」は広がっても、そこで通信速度が上がるとは限らないが、無制限のデータ通信を求める人には、月額3272円で使い放題の楽天モバイルが最初の選択肢になるだろう。

 楽天グループ内のサイトから簡単にモバイルの契約ができ、eSIMならプロファイルのダウンロードまで一気に済んでしまう「ワンストップ開通」の提供もあいまって、契約者数の増加も見込める。3000億円規模の資金調達を実施し、モバイル事業の財務の健全化を図っているが、好業績で健全化を促進できるか、今後も目が離せない状態が続きそうだ。

筆者プロフィール:房野麻子

大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、業界動向を追っている。


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