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ちょうどいい案件管理ツール boardSaaS対決特別編(3/3 ページ)

» 2023年05月22日 12時38分 公開
[武内俊介ITmedia]
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電子契約サービスや会計サービスとも連携

 2つ目の特徴は、電子契約サービスとの連携である。コロナ禍を経て日本でも一気に普及した電子契約サービスであるが、boardはクラウドサイン、DocuSignとAPI連携しており、boardの「案件」上に作成された発注書や検収書を送付して電子署名してもらうことができる。署名が完了すればboard上のステータスも「受注」などに更新されるため、対応漏れも発生しない。

 CRMやSFAでは電子契約サービスとの連携は珍しいことではないが、請求書発行ツールでは対応しているサービスはほとんどない。月に数枚であれば1つずつPDF化して、電子契約サービスにアップロードする対応でも問題ないが、やはり件数が増えてくることで事務負荷は重くなってくる。boardの案件管理機能で受注や納品などのステータス管理が容易であるため、電子契約サービスと連携することで煩雑な処理によるストレスが大幅に軽減される。

 3つ目の特徴は、豊富な会計連携機能である。請求書発行ツールの多くは会計ソフトへの連携機能を提供しているが、タグなどのさまざまな条件によるケース別の勘定科目や税目、部門などの出し分けが非常に細かく設定できるところまで提供しているのはboardだけだ。各会計ソフトとは独立して運営されているからこそ、あらゆるケースに対応できるようになっているのである。

 また以前取り上げた通り、freee会計は「取引」という特殊な形式で処理をするのが特徴だが、boardはfreee会計とAPI連携をすることで案件のステータスが「請求済」になると即座にfreee上に取引が作られる。ユーザーとしてはfreee会計上の請求書発行機能を使っているのと遜色がないレベルでの連携であり、管理するべき案件数が増えてきた多くのfreeeユーザーがboardを使っている。

 4つ目の特徴は、外注や仕入などを「案件」にひも付けて登録することで、粗利が管理できることだ。この機能も請求書発行ツールではほとんど実装されておらず、SFAやCRMでも個別開発をしなければ実現することができない機能だ。boardでは在庫管理をすることまではできないが、受注した案件の一部を外注するようなケースではboard上で発注処理も行うことで簡単に案件毎の利益を見ることができる。

 システムの受託開発などではこの機能があることによって、案件の収支が簡単に管理できるようになる。システム開発会社出身である田向氏らしい発想である。

ちょうどいい案件管理ツール

 boardは差別化が難しいと思われていた請求書発行ツールという領域で、さまざまな機能を付加することによって独自のポジションを構築している。まったくWeb広告などのプロモーションを打っていないにも関わらず、着実にユーザー数を増やし続け、有料ユーザーは4500社を突破し、さらには有料継続率は99%を超える。

 「案件」という概念を取り入れることで他の請求書発行ツールよりも少しだけ広い範囲をカバーし、会計ソフトにもシームレスに連携するboardは、SFA・CRMは過剰であるが、請求書発行ツールやExcelでは不足するユーザーのニーズにピッタリとハマっているのである。このような特徴を持つboardのことを私は「ちょうどいい案件管理ツール」と呼んでいる。

SFAやCRMと、会計ソフトの間をつなぐ領域をターゲットとしている(boardのWebサイトより抜粋)

 請求書を発行する前には、見積もりや発注などの処理が確実に発生するため、受注ステータスを管理する必要があるが請求書発行ツールのその機能は貧弱で、多くの中小企業はExcel管理をしていた。また、年間契約かつ毎月請求の場合には見積書・発注書と請求書が1対1の関係にならないため、別途請求書を毎月作成する必要が生じていた。だからといって、高額のSFAやCRMまではいらない。そういうホワイトスペースが個人事業主や中小企業の一部には存在したのである。

 請求書を単に発行するだけであれば、わざわざ有料のツールを契約する必要はないが、boardはちょうどいい案件管理ツールであるため、請求書発行ツールではできないことができる。しかも月額料金も数千円で使えるため、費用対効果は抜群である。

boardの料金プラン(boardのWebサイトより抜粋)

 請求書発行ツールでの処理に限界を感じている企業はぜひ試してみてもらいたい。

執筆者 武内俊介 株式会社BYARD代表取締役、税理士

 

金融の企画部門、会計事務所、ベンチャーの管理部門を経て、税理士・業務設計士として独立。複数社への業務の再構築とITツールの導入支援を提供した後、株式会社BYARDを創業し、業務設計プラットフォーム・BYARDを開発・提供している。


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