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基幹システムのクラウド化から数年 エディオンが感じる手応えと課題は?(1/2 ページ)

» 2023年05月23日 10時42分 公開
[本多和幸ITmedia]

 エディオンは近年、基幹システムをオンプレミスからパブリッククラウドに移行し、システム運用の内製化を進めている。2020年11月には、基幹システムを「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)に移行し、運用を始めた。

 移行から数年後の現在では、その効果やクラウド化したからこその課題も見えつつあるという。一連のプロジェクトをけん引する松藤伸行さん(ソリューションサービス本部ITソリューション統括ITソリューション開発部長)は「ビジネス環境の変化は激しくなるばかり。そこにITがついていけないとビジネスそのものを変えることができない。そのためには自社でITをしっかりコントロールできることが大事」と話す。

 エディオンがクラウド化で感じる手応えと課題とは。日本オラクルが4月14日に、開催した年次イベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」(ANAインターコンチネンタル東京)で、松藤さんが自社の現況について語った。

そもそも移行のきっかけは ITがビジネスアジリティ向上の足かせに

 直営店舗、フランチャイズ店舗を合わせて1200以上の店舗を全国に展開するエディオン。主力の家電販売に加えて、EC、リフォーム・住宅関連事業、ISP事業、プログラミング教育などにもビジネスを拡大している。直近では新型コロナ禍が市場環境の変化を促す大きな要因となったが、少子高齢化や人口減など、中長期的に同社のビジネス環境に影響する要素は少なくない。

 そこで同社は単なる“モノ売り”だけではなく、アフターサポートの充実を含めて、製品の「価値」や「効用の提供」を重視。スピーディーかつ継続的に顧客体験のアップデートを図っている。そのための重要施策の一つが、ビジネスインフラとしての情報システムの刷新だ。具体的な取り組みとしてまず着手したのが、基幹システムのクラウドシフトだった。

 エディオンの基幹システムは、全店舗の売上情報を管理し、倉庫の在庫や物流と連携させる仕組みが主要な機能だ。約10年前にオンプレミスで構築し、計200台超の物理サーバ、仮想サーバで構成される大規模なものだったという。データベースマシン「Oracle Exadata」を採用するなどして安定した稼働は実現できていた一方で、課題も顕在化していた。松藤さんは次のように振り返る。

ALT Oracle CloudWorld Tour Tokyoに登壇したエディオンの松藤伸行さん

 「情報システム部門の人員は限られているが、システムの保守運用業務にとにかく多くのリソースを割かなければならなかった。ハードウェアの状態はもちろん、大量のバッチ処理やデータ連携の監視も必要だった。障害が起これば原因を調べてリカバリーし、社内ユーザーからの問い合わせにも対応しなければならない。業務の属人化やシステムのブラックボックス化も進んでいた」(松藤さん)

 結果として、ビジネスのアジリティを支えるという観点では、ITが十分な役割を果たせない状況に陥っていたという。ITインフラの性能を強化したり、新しいビジネスの基盤となるシステムを開発したりしようにも、保守運用に人手を取られ、スピード感のある対応ができなかった。同社内での問題意識も高まっていたという。

 大規模災害などに対応できる事業継続のための環境づくりにも課題を抱えていた。基幹システムのデータは遠隔地のデータセンターにバックアップする仕組みがあったものの、スムーズな復元ができるか見通しは立っていなかったという。松藤さんは「(こうした状況で)果たしてITがビジネスを支えているといえるのか、ITを自分たちでコントロールできているのかを改めて見つめ直し、基幹システムの刷新を決めた」と振り返る。

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