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IBMも生成AI「watsonx」 透明性とカスタマイズ性で“ビジネスに使えるAI”強調

» 2023年05月26日 13時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 米IBMが、生成AIを含むAIとデータのプラットフォーム「watsonx」(ワトソンエックス)を市場に投入する。AI実行環境「watsonx.ai」とデータプラットフォーム「watsonx.data」の提供を7月に始める。市場のホットワードとなっている生成AIに対し、透明性やカスタマイズ性を付加価値としてビジネス向けの展開を図る。

「watsonx」の全体像 watsonx.ai, watsonx.data, watsonx.governanceの3つからなる(以下、日本アイ・ビー・エム提供)

 watsonx.aiでは従来の機械学習によるAI開発に加え、基盤モデルによるAI開発をアピール。従来は欲しいAIモデルに応じてデータを集め学習させていたが、基盤モデルではIBMが提供する基盤モデルに対し、少量のデータによる追加学習を個々のニーズに応じて行えるためAIモデルの作成や活用が高速化するという。米OpenAIの「ChatGPT」で言えば「GPT-4」が基盤モデルに当たり、これをチューニングするイメージだ。

 IBM独自の基盤モデルはコード生成モデル「fm.code」、大規模言語モデル「fm.NLP」、地理空間データモデル「fm.geospatial」など10種類以上あり、それぞれ事前学習に当たっては訓練データについて法務と安全性の面から透明性を担保しているという。また、AIモデルの共有やコミュニティー機能を持つWebサイト「Hugging Face」を運営する米Hugging Face社と提携することでオープンソースの基盤モデルを使ったAI構築も可能としている。

watsonx.aiではIBM独自の基盤モデルを提供する他、米Hugging Face社との提携でオープンソースモデルも利用可能
従来の機械学習と、基盤モデルを使った生成AIの両方を支援する

 一方で、基盤モデルの性能評価は未公開。日本アイ・ビー・エムが開いた記者説明会では「米MIT(マサチューセッツ工科大学)や他大学との共同研究では優れたベンチマーク結果を出している。そうした技術を商用のwatsonxにも今後転用していく」(同社)との言及にとどめた。

 watsonx.dataでは、クエリエンジン、データ形式、ストレージ形式それぞれで主要なフォーマットに対応。特定ベンダーに依存せず、オンプレミス環境とマルチクラウド環境でワークロードを管理可能としている。さらにデータガバナンス機能も内蔵。IBMが提供する既存のガバナンスソリューションに対応する他、2023年後半に提供を始める「watsonx.governance」にも対応する。watsonx.governanceではデータセットの出自などを文書化することでAIのライフサイクル全体を統制し、説明可能なAIワークフローを実現するとしている。

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