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パスワード管理ツール LastPass vs. 1Password 「使いまわし」「下二桁変更」で済ませていませんか?(1/4 ページ)

» 2023年05月30日 12時07分 公開
[武内俊介ITmedia]

 企業でのSaaS活用も進み、10以上のSaaSを利用している企業も決して珍しくはなくなってきている。SaaSのユーザーアカウントは管理者から利用者に付与され、そのIDとパスワードは利用者自身で管理をすることが基本だが、利用するSaaSが増えればアカウントも増えるため、IDとパスワードを管理するのが大変になってくる。

(イメージ)

 とある企業に勤める情シス担当者の方からは、社内からの問い合わせの半分以上が「パスワードを忘れた」というものだという話も聞いたことがある。

 SaaSはインストールが不要で、インターネットブラウザ上でさまざまなソフトウェアを利用できる非常に便利なものではあるが、IDとパスワードが外部に漏洩してしまえば不正にアクセスされる危険性も高い。セキュリティ強化のために近年では二要素認証(通常のパスワード認証に加えて、ワンタイムパスワードによる認証を設定する機能)などを必須にするSaaSも増えているが、パスワード管理がセキュリティ対策の基本であることには変わりがない。

 今回のSaaS対決は、1社あたりのSaaS利用数がこれからも増えていくことが想定される中で、活用が必須だと思われるパスワード管理ツールを取り上げる。地味で普段はなかなか意識することがないかもしれないが、企業にとって軽視することができない分野でもある。なお、このようなツールの正式名称は「パスワードマネージャー(Password Manager)」というが、本稿では日本語としてイメージがしやすい「パスワード管理ツール」と呼ぶことにする。

すべての要件を満たした上で、10以上のSaaSのパスワードを管理できるだろうか?

 ID・パスワードの認証方式はあらゆるシステムで用いられているが、SaaSの場合はIP制限(特定のIPアドレスからでなければアクセスを不可にする制限)などの特殊な対応をしないかぎり、社外環境からもID・パスワードが分かれば容易にアクセスできてしまうため、その管理がより重要になってくる。

 総務省が公表している安全なパスワードの作成条件は以下の通りである。

  1. 名前などの個人情報からは推測できないこと
  2. 英単語などをそのまま使用していないこと
  3. アルファベットと数字が混在していること
  4. 適切な長さの文字列であること
  5. 類推しやすい並び方やその安易な組合せにしないこと

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)も「できるだけ長く、複雑で、使い回しでないパスワード」を推奨している。なお、以前はあった「定期的にパスワードを変更する」という要件は現在では削除されている。

総務省の「安全なパスワード管理」では、パスワードの保管方法として「パスワード管理ツールやサービスの利用も一考です」とし、パスワードの定期的な変更は不要だとしている

 サービスによっては定期的なパスワードの変更を必須にしているものもあるが、定期的に変更することでむしろパスワードの作り方がパターン化して簡単になったり、使い回しをしてしまうことなどの弊害が多いため、アカウントが乗っ取られたり情報漏洩の懸念がある場合を除き、パスワードを定期的に変更することは不要だとされている。

 さて、このすべての要件を満たした上で、10以上のSaaSのパスワードを管理することがあなたにはできるだろうか。多くの場合、パスワードを使い回したり、同じような文字列を用いて下2桁の数字を変える程度のバリエーションになってしまうのではないだろうか。

 パスワードが複雑になれば頭で覚えきれるはずもないので、どこかにメモをしておくことになる。持ち歩いているメモ帳に書いておく、パソコンのメモ帳アプリに書いたものをデスクトップに置いておく、付せんなどに書いて机の引き出しの中に貼っておくなど、かなりアナログな管理方法になってしまう人も多い。ITリテラシーがある人にとってはモニターに付せんで貼っておくのは論外だと思うが、実態としてはそういう人が多いのも事実だ。

 せっかく最新のSaaSを使っているのに、パスワード管理になってしまうと急にアナログな対応になってしまうのは残念な限りだが、そもそも私たちの頭は意味のない文字列を完璧に記憶するようにはできていない。

 それを解決してくれるのが今回紹介するパスワード管理ツールだ。パスワード管理ツールは、パスワードを安全かつ確実に保存するアプリケーションであり、保存したパスワードをPCだけでなくスマホやタブレットでも利用できるようになっている。大事なパスワードを保存するため、信頼性と安全性が高いサービスを選択することが重要だ。

 本稿ではこの分野のツートップであるLastPass(ラストパス)と1Password(ワンパスワード)を取り上げる。

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