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「エンジニアのための刑事事件対策まとめ」“Coinhive事件”のモロさんが公開 “唯一絶対の正解”は?

» 2023年05月30日 17時01分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 エンジニアが刑事事件に巻き込まれたらどのような対策をすればいいか。「Coinhive事件」で無罪判決を受けたWebデザイナーのモロさん(@moro_is)は5月30日、ブログ記事「エンジニアのための刑事事件対策まとめ」を公開した。自身の経験をもとに家宅捜索や取り調べなどに対する情報をまとめている。

モロさんが公開した「エンジニアのための刑事事件対策まとめ」から引用

 Coinhive事件では、仮想通貨のマイニングツール「Coinhive」を閲覧者に無断で自身のWebサイトに設置したとして、Webデザイナーのモロさんが不正指令電磁的記録保管罪に問われた。一審判決では無罪となったが、二審では一転し罰金10万円の有罪に。2022年1月には最高裁判所が無罪判決を言い渡し、裁判は決着した。

 無罪判決から1年以上たった今、なぜ今回の記事を公開したのか。モロさんは「なまじ注目を集めてしまっただけに、この事件にとらわれてクリエイターとしての本分を忘れてしまうことを恐れていた部分がある」と話す。しかし1年以上がたち、ある程度冷静に振り返ることができるようになったとし、業界の利益のためにできることはやるべきと思い至ったという。

 「これまでのブログなどは、あくまで自分のことだけをできるだけ客観的に報告する、という趣旨で公開してきた。しかし、その中で知ったことや、教えてもらったこと、気づいたことは、当たり前に過ごしていると知り得なかったものが多く、そういった情報が必要な人が今後出てきたとき、何らかの助けになればという意図でまとめた」(モロさん)

「家宅捜索」「取り調べ」はどう乗り切る? 裁判での“唯一絶対の正解”とは

 モロさんのブログでは「家宅捜索」「取り調べ」「調書」などについて、自身の経験談などを記載している。まず、家宅捜索についてはモロさんの場合は抜き打ちで行われたとしている。「『今からいきますね』程度の連絡はあるものの『なぜ来るのか?』『何をしに来るのか?』1つも明かされないため手の打ちようもない」という。

 また「家宅捜索の録音・録画は法的には問題がない」とも言及。もう一度やり直せるなら、この時点で弁護士へ連絡して、家宅捜索を監視してほしいと振り返っている。

 取り調べでは「出生秘話から日々の食生活まで『その情報いる?』みたいな質疑応答が丸1営業日ほど繰り返される」ため、弁護士不在の状況では黙秘が望まれると指摘。その後に求められる調書への署名についても、署名すると後の裁判が不利になる可能性があるため、署名はしないよう訴えている。

 この他にも「PCのパスワードを警察に教える義務はない」「不当な取り調べを避けるために録音を行う」など、裁判を有利に進められる知識やテクニックなども紹介。一方で「刑事事件は極めて専門性が高いため、いくら細かいハックを駆使したところでデザイナーやエンジニアの手には余る」と指摘している。

 そのため、総じて「弁護士を呼ぶのが間違いなく唯一絶対の正解」という。一方、素人では弁護士の選定も難しいとし、エンジニアであれば無料登録ができる「日本ハッカー協会」へ依頼することが最適解としている。

 「登録だけで有事の際に弁護士の紹介を受けられるだけでなく、弁護士費用の補助なども受けることができる。私を弁護してくれた凄腕の弁護士もハッカー協会と提携しているため、盤石である」(モロさん)

日本ハッカー協会の公式Webサイトから引用

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