「電子黒板」をご存じだろうか。読んで字の通り、電子化された黒板のことだ。メーカーによって定義はさまざまだが、文部科学省はテレビなどとの違いとして「直接画面に書き込める」「タッチ操作できる」ことを挙げている。要するに、教室で授業の時に使う、タッチパネル搭載の大型ディスプレイを指すわけだ。
実はいま、主に小中学校でこの電子黒板の需要が高まっているとして、ベンダー各社が製品開発や営業活動に力を入れている。例えば5月に東京ビッグサイトで開催された教育業界向けの技術展示会「教育総合展」(EDIX東京)では、アイ・オー・データ機器やソニー、シャープなど、IT業界でも名が知られた企業が実機を展示していた。
各社がここまで力を入れるのは、文部科学省が推し進める「GIGAスクール構想」によって「生徒1人にPC1台」が実現したためだ。電子黒板を巡る市況はいま、どんな状況なのか。EDIX東京や、システム開発事業者の内田洋行(東京都中央区)などからなる実行委員会が開催した教育業界向けイベント「NEW EDUCATION EXPO」(6月1日〜3日、東京ファッションタウンで開催)に出展した各社に聞いた。
そもそも、文科省はGIGAスクール以前から電子黒板の設置を推奨していた。2019年度には大型ディスプレイやプロジェクターを含む「大型提示装置」の普及率を100%にする計画を掲げており、2023年3月までは補助金も出していた。ここに「生徒1人にPC1台」施策が拍車を掛けた形だ。
というのも、生徒にPCやタブレットが行き渡り、デジタル教材が一般化すると「教師・生徒のPC画面を大きく映したい」という需要が生じる。本物の授業風にいえば「この問題をみんなで考えてみよう」「○○君の回答や作品を見てみよう」といった具合だ。オンライン授業のとき、Web会議ツールの画面を大きく映し、参加者の表情や反応を確認するような使い方もある。
一連の要望は、もともと学校にあるプロジェクターやテレビのような大型ディスプレイでの対応も可能ではある。とはいえ横長の教室となると、できるだけくっきり見やすい画面がいい。動画教材を使うなら、音声も聞こえやすいほうがいいだろう。
画面に直接手やペンで書き込めるなら、より直感的に授業が進む。PCやタブレットとの接続も、できるだけ簡単なほうがいい。なにせ授業の時間は限られている。
というわけで、学校は電子黒板を中心に大型提示装置の導入を進めているという。ここに商機を見込んだ各社が、イベントなどで営業を強化しているわけだ。
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