会社全体でデータ活用を行いたい! でも思うように浸透してくれない……データ活用の旗振り役に任命された担当者たちの中にはそんな悩みを抱える人もいるかと思う。今回はそんな人に向け、セブン銀行の取り組みを紹介する。
セブン銀行は2022年3月時点で、国内に2万6000台以上のATMを展開、ATM稼働率は99.98%に及ぶ。同社はATM内の現金管理やコールセンター事業にデータ分析を導入し、全社的にデータ活用に乗り出している。そのために力を注いでいるのが、社員教育だ。全社員の30%に当たる160人以上がデータ分析を学べる環境を作り出したという。
これを実現するために、同社では2つの施策に取り組んでいる。1つは社内で“市民データサイエンティスト”の育成を目指す「データサイエンスプログラム」、もう1つはデータ活用のお悩み相談窓口「データマネジメントオフィス(DMO)」の開設だ。
データ活用の必要性は叫ばれる一方です。しかし、「実際に業務効率化や収益改善に役立った事例」はどれほどあるのでしょうか。また「データ活用をしてもうまくいかなかった事例」はないのでしょうか。先行企業の試行錯誤を通じて、データ活用の勘所を探ります。
市民データサイエンティストとは、専門家ではないがデータの統計解析など基本的なスキルを身につけた人たちを指す。セブン銀行は、全社横断のデータ活用の実現には「社内の各部署にデータの取り扱いに長けた人材を置く必要がある」と考えて一般社員に向け、データ分析の知識やスキルを持つ人材を育成している。
データサイエンスプログラムを始めたのは2021年7月ごろ。社内のデータサイエンティストたちが、データ活用の初心者である社員たちに講座を開いている。内容は座学による基礎知識の解説から、BIツールを使った演習など。1回の講座につき、約2時間の研修を2日間実施し、これを1〜2カ月に1回ほどの頻度で開催している。
講師を担当する松岡真司さんは「営業部から人事部、総務部までさまざまな部署の社員が参加している。参加者からはデータ分析の基本的な考え方やビジネスへの活用の仕方、BIツールの基本的な操作は身に付けることができたという声が聞こえている」とこれまでの成果について話す。
受講者の中には「より高度な知識やスキルを身に付けたい」と希望する社員も。そこで、さまざまなタスクを自動化する「自動機械学習ツール」の開発に取り組む上級コースも用意し、社員への教育体制を強化している。
松岡さんは「“市民データサイエンティストの育成”という目標はまだまだ道半ば。それでもここまで来られたのは、相談窓口の機能を持つ『データマネジメントオフィス(DMO)』を開設して社員へのサポート体制を万全に整えたことが大きい」と話す。
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