タイムラインの動画に字幕を入れるという機能は、Ver.18でも存在した。ただDaVinci Resolve Studio内に文字の書き起こし機能がなかったので、Vrewなど他のソフトで作成した「.srt」字幕データをロードして配置するというワークフローであった。今回文字起こし機能も内包したことで、最初から最後までDaVinci Resolve Studio内で字幕作成作業が行なえることになる。
タイムライン上で完成した動画に字幕を付ける場合には、タイムラインの左側にある「Timeline Actions」というボタンをクリックして、メニューから「Create Subtitles from Audio」という機能を選択する。つまりタイムラインに対して、もう一度AI文字起こしを行なう事になる。おそらく既存の字幕作成機能にAI文字起こし機能を組み込んだのでこうした実装になったのだと思われるが、素材の段階でも文字起こししているのに、そのデータは使われないというのはなんとももったいない。
字幕作成機能のプリセットには、デフォルトのほか、Teletext(文字多重放送)、Netflixがある。一応3種類試してみたが、違いがよく分からなかった。その他、字幕の最大文字数や行数を設定できる。
字幕データは、専用のトラックに配置される。文字の修正は、字幕トラックと該当クリップを選択すると、インスペクタの「キャプション」欄で可能になる。ただ1枚に文字が多すぎたり、言葉の切れ目が悪かったりした場合には、次のテロップへ「送る」作業が必要になる。
この修正はキャプション欄だけでは行なえず、まず文字組みだけ修正したのち、テロップチェンジのタイミングはタイムラインのほうで修正する必要がある。こうした微調整は、字幕データを改行するだけでタイミング調整までいっぺんにできるVrewのほうにアドバンテージがある。
日本は字幕大国で、1時間のテレビ番組に挿入されるテロップは、1000枚を超える。字幕の切り替えポイントの簡単修正や、固有名詞の一括置換といった機能の搭載が、今後の課題になってくるだろう。
また日本のテレビ番組や映画の字幕、テロップでは、句読点を付けないという慣習がある。DaVinci Resolve Studioでの文字起こしには必ず句読点が付けられてしまうので、これを一括削除するか、句読点を付ける、付けないの選択肢が必要になるだろう。通常の文章のルールと字幕のルールが違う言語というのはおそらくあまりないと思われるので、こうした日本独自のローカライズをどこまでやってくれるのかで、実際に現場で使えるツールなのかが変わってくる。
まだβ3なので、日本語の実装も取りあえず問題なく動くというレベルである。今後多くのフィードバックを受けて、仕上がってくるだろう。ただ効率的になればなるほど、各アプリの設計や動作も似てきてしまうので、お互いのパテントに触れないように実装するのはなかなか大変そうだ。
ただ動画編集者にとっては大きな進化点なので、AIツールの出来次第では他のツールへの乗り換えも起こりかねない。映像業界では過去にも機能やUIの過不足で、そのような「民族大移動」が何度か起こっている。各メーカーとも、気が抜けないところに差しかかってきた。
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