フィンランドの博物館で展示中の古代魚「サカバンバスピス」の模型がシンプルでゆるい表情をしていると、ネット上で話題になっている。多くのユーザーがそのイラストなどを作成し、ネット上に掲載している。しかし一部のユーザーからは「著作権侵害に当たるのではないか」という指摘もあるようだ。
この模型は、フィンランドのヘルシンキ自然史博物館に展示されているもの。海外の研究者であるキャット・ターク(@kat_scans)さんが2022年に画像を投稿したものを、23年6月に日本の科学系ニュースサイト「エピネシス」が取り上げた。模型のサカバンバスピスは、少し離れた黒目と逆三角形の口が特徴的で、ネットユーザーからは「あまりに情けない表情」と人気を集めた。
これを見たネットユーザーはサカバンバスピスの模型をモチーフにしたイラストなどを相次いで投稿。ぬいぐるみやLINEスタンプ化して販売する人も現れた。一方、権利関係の疑念を拭いきれず、LINEスタンプの販売を止めたクリエイターもいるようだ。
博物館などに展示されている模型をモチーフに、イラストなどの二次創作を行うことは著作権侵害に当たるのだろうか。ネットコンテンツに関する法律に詳しい、シティライツ法律事務所の前野孝太朗弁護士に見解を聞いた。
前野弁護士は「サカバンバスピスの模型からイラストなどを作成する行為が、著作権侵害に当たるか考えるには、2つの点を検討する必要がある」と説明。(1)サカバンバスピスの模型が著作物といえるか、(2)イラストなどの作成行為が著作権を侵害するか、の2点を挙げた。
法律では、著作物の定義を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法第2条の1)と示している。これを踏まえると、(1)では「創作的に表現したもの(=創作性があるか)」かどうかがポイントになるという。
前野弁護士は「著作物といえるためには、創作者の何らかの個性が発揮されている必要があり、ありふれた表現には創作性が認められない。つまり、この模型が作られた当時の状況からして、誰が作ってもこのような模型になるのであれば、創作者は個性を発揮しておらず、模型に創作性は認められないことになる」と見解を語る。
一方、自身は古代魚の模型の作成などに詳しくないと前置きした上で「模型を作るに当たっては、例えば、魚の形状や、各部位の色彩、配置、角度などの選択において、作成者の創意工夫が介在する余地があるものと推測できる。この模型も作成者の個性を発揮した部分が認められ、模型全体が著作物に当たる余地も十分にある」と考えを話す。
しかし学術的な模型である以上、当時考えられていたサカバンバスピスの特徴をなるべく忠実に再現していると考えられる。そのため、作成者が個性を発揮できる点(創作性が認められる点)は限られることになると、前野弁護士は指摘する。
「例えば、ゴールデンレトリバーの模型を作るとして、耳が垂れていて、目はこの当たりに位置して、形はアーモンド形であり……という点は、その生物の模型として必然的に生じるので、作成者の個性が発揮された部分にはならない」
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