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話題の古代魚「サカバンバスピス」 模型のイラスト化はNGなの? 弁護士に聞いた(2/2 ページ)

» 2023年06月23日 17時17分 公開
[松浦立樹ITmedia]
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模型のイラスト化は著作権を侵害するか?

 続いて(2)イラストなどの作成行為が著作権を侵害するか、を検討する。模型という著作物を参考にイラストを創作する場合、主に問題となる権利は「翻案権」になる。翻案権とは、著作権の一つで、元の特徴を残した別の著作物を創作する権利のことを指す。

著作権法第27条から引用

 翻案権侵害が認められる場合、「依拠性」と「類似性」の2つの要件を満たしている必要があるという。依拠性とは「他人の著作物に接し、それを自己の作品の中に用いること」を指し、今回の場合これは問題なく認められる。検討するべきなのは、類似性だ。

 類似性を認めるには、他人の著作物の「表現上の本質的な特徴」をはっきりと理解できることが必要になる。この特徴は言い換えると「創作性のある部分」となり、これが共通していなければ、類似性は認められず、翻案権侵害にはならない。つまり、サカバンバスピスの模型の創作性のある部分が、イラストにも共通してあるといえるなら、類似性が認められ、翻案権侵害が成立する。

 例えば、サカバンバスピスの模型をモチーフにしたイラストの多くには「白い円の中に黒い円の目」「逆三角形の形をした口」「少し離れた両目」などの特徴が見られる。これらの特徴に対しては「創作性が認められる可能性はかなり低いと考えられる」と前野弁護士は指摘する。

 「この目と口の形、配置は、単に学説を忠実に再現したものなら、創作性は認められないし、仮にそうでないとしても、既存のキャラクターなどの多くの表現にも存在するもので、ありふれた表現と考えられる。この形と配置のみで創作性を認めてしまうと、同じような目と口のキャラクターを描くには、毎回サカバンバスピスの模型の著作権を持つ人に許諾を得なければならなくなってしまう」

 この他の特徴についても同様に、創作性が認められる可能性は低いと考えられることから、前野弁護士は「サカバンバスピスの模型からイラストなどを作成する行為に、著作権侵害が成立する可能性は低いのでは」と見解を示している。

翻案権侵害は商用利用とは直接関係せず

 前野弁護士は翻案権侵害についての補足説明として、イラストの商用利用についても言及。翻案権侵害は、元の特徴を残した別の著作物を創作した際に成立するが、私的使用の目的で行われた場合には侵害とならない。つまり、商用利用以外にも、SNS上での公開やコンクールへの応募などの場合も、翻案権侵害の要件を満たしていれば、これは成立するという。

 「翻案権侵害との関係では『商用利用する目的か』ではなく『私的使用の目的か』という基準が重要になる。商用利用と翻案権侵害は直接関係しない」と前野弁護士。

 一方、商用利用については一般論として「対価を得ていることで目立ちやすくなり、権利者からの権利行使を受けやすくなったり、いわゆる炎上の可能性が高くなるということはあり得るかもしれない」とも指摘した。

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