「EV二束三文」説の根底にあるのは、動力バッテリー性能の劣化に伴う航続距離の低下を心配してのことだと思います。航続距離が短くなれば、「移動」というクルマとしての主たる機能が著しく低下するので、価値が下落するのは理解できます。
下のグラフは、TeslaFi(サードパーティー製のTesla専用記録サイト)による100%充電時の予測航続距離の推移です。車載コンピューターのデータを専用装置でスキャンしたものではないので、あくまでも推定値であることをご了承ください。
青い線が筆者のModel 3の航続距離です。面白いのは、航続距離の低下がリニアな右肩下がりを示しているものではないという点です。納車時約532kmだったものが、距離を重ねるにつれ上昇し、オドメーター1万km付近で最高値551kmをたたき出し、その後低下しています。最低値は約527kmです。ちなみにこの推定値は、直近の乗り方が影響するそうですが基本的に乗り方は変えてはいません。
最大値と最小値を比較すると約5%の劣化です。ただ、前述のように納車時より向上している時期もあるので、単純比較して良いものかどうかわかりません。納車時約532kmと最低値約527kmを比較(点線のトレンドライン)すると約1%の下落に止まります。季節やソフトウェアアップデートが関係してるのかと言えば、そうでもなさそうです。
注目していただきたいのは、2022年末の1万4000km付近で約540kmから約530kmへとストンと一気に落ち込んでいる点です。これは「EV旅の秘訣は“満タン主義“との決別 テスラで『往復3000kmドライブ』(前編)」で紹介した長崎旅行のタイミングです。長距離走行ということもあり、連日100%充電をくり返しました。
筆者のModel 3 ロングレンジは、「三元系」とよばれるリチウムイオンバッテリーを搭載しています。このバッテリーは、満充電をくり返すと劣化が早まるという性質があります。そのため、普段遣いにおいては、50〜80%に上限を設定する機能があります。
普段は70〜80%を上限に設定して運用しており、旅に出るときだけ計画的に100%充電を行なうようにしています。件の長崎旅行では、連日の長距離移動が求められるため100%充電をくり返したというわけです。
100%充電をくり返したことで図のような「充電制限」アラートが表示されました。ちなみに、このときは、旅の途中だったのでアラートを無視して「いいえ」をタップしました。それが原因で急落したのでしょうか。謎です。
ガソリン車であれば、時間経過や走行距離とともに航続距離がめまぐるしく上下したり急落するようなことはないと思います。EVには、このような従来の経験則では計れないブラックボックス的な部分があることは理解しておく必要があります。
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