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EV旅の秘訣は“満タン主義“との決別 テスラで「往復3000kmドライブ」(前編)走るガジェット「Tesla」に乗ってます(1/4 ページ)

» 2023年02月03日 19時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。この連載では、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマをレポートします。


 2022年11月末、Model 3で横浜から長崎の往復3000kmの旅をしてきました。前後編の2回に分けてModel 3での長旅の様子をお届けします。ガス欠ならぬ電欠の心配、公共の急速充電インフラの課題、Teslaの魅力を再認識したことなど、この長旅でたくさんの経験や新たな発見をし、さまざまな知見を得ることができました。

旅の目的の1つ、東シナ海を望む外海地区の「遠藤周作文学館」にて。ユーモアエッセイで彼のことを知り、その後純文学作品を読みあさった

 旅の大まかな行程はこうです。横浜の自宅を出発し岡山で一泊した後、長崎に入ります。長崎のTesla専用充電器が設置してあるホテルに4連泊し、復路は岡山で一泊して横浜に帰るという6泊7日の旅です。

 隠れキリシタンゆかりの地を巡ることが旅の最大の目的です。中学生のときに初読して以来、これまで幾度も読み返している、隠れキリシタンをテーマにした遠藤周作の『沈黙』の舞台を時間をかけて巡りたいという、かねての夢をかなえることができました。

中学生のときに手に入れた新潮社の純文学書下ろし特別作品シリーズの「沈黙」。昭和48年6月10日発行41刷で定価740円なり

EV旅の現実に直面

 EVでの長旅となると多くの人が気にするのは、満充電からの航続距離と経路途中での充電だと思います。実際、「Model 3で長崎まで行った」と友人知人に話すと、皆、驚くと同時に口をそろえて「充電は?」と心配してくれました。本稿では、皆さんが気にする充電関係の話題を中心にお伝えします。

 実際、今回の3000kmの旅では、バッテリー残5%まで追い込まれ助手席の家人をやきもきさせたり、公共の急速充電インフラの貧弱さに落胆したり、あるいは、充電予定だった訪問先の充電器が故障で慌てるといった経験をしました。

 2021年9月に納車されてから1年余、各種条件下における愛車の電費やエネルギー消費の傾向のようなものがある程度身体に染みついたこともあり、経験と勘を総動員しながら、事前に旅の予定に沿った充電計画を立案し出発に備えたわけですが、前述のような予定外の事象に遭遇するなど、EVでの長旅の現実を知るところとなりました。

 以前、本連載では「Teslaロングドライブ、横浜から岡山まで1400km 残り5%予測ギリギリ旅の乗り切り方」 をご紹介しました。その際、「充電計画なんて面倒だ」「ハイブリッド車は満タンで1000km近く走れるのに、何でEVなの」といったご意見をいただきました。

 実際、筆者自身、前々車のシトロエン、前車のメルセデス・ベンツでは、横浜から岡山まで余裕で無給油走破を経験しているので、そのようなご意見は最もだと思います。欧州車の高速燃費は抜群に優れていますからね。

今回の旅では、高速道路のPAにあるCHAdeMO充電器も利用した。背後のガソリンスタンドのハイオクの価格にはがくぜんとする。補助金がなかったらと思うと恐怖しかない

 基本的にエネルギー補給に腐心する必要のないガソリン車やハイブリッド車に比べると、EVでの長旅は、不便であることは否めません。その一方で、充電のために高速道路を途中下車したからこそ得られた予定外のうれしい体験もありました。

 ちなみに頂戴したご意見の中に「旅の目的が充電になってる(笑)」といったものもありました。しかし、そのようなことは一切ありません。前述のようにEVというと、充電周りへの関心が高いことで、話の比重が大きくなることから、そういった印象になるのでしょう。では、KKD(勘と経験と度胸)で乗り切った3000kmの旅にお付き合いください。

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