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古代のサメ「メガロドン」、実は温血動物だった 歯の分析で判明

» 2023年06月28日 19時53分 公開
[ロイター]

 太古の海で猛威を振るい、現代の映画スターにもなった巨大なサメ「メガロドン」。名前はその「大きな歯」から付けられた。ノコギリ歯の長さは最大で約18cmにもなり、紺碧の海のどんな獲物も引き裂くことができた。

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 その歯のエナメル質のような組織内部の鉱物組成を分析した結果、メガロドンは温血動物だったことが分かった。研究者は、この特徴がメガロドンの繁栄と没落の両方に影響したと推測している。

 研究者は、クジラを含む海洋哺乳類を狩るメガロドンは、少なくとも50フィート(15m)に達し、おそらく65フィート(20m)にも達していたと推定している。メガロドンの全身の平均体温は華氏81度(摂氏27度)で、周囲の海水よりも13度華氏(摂氏7度)ほど高く保つことができた。

 これにより、メガロドンはよりダイナミックな捕食者になることができた。食物をエネルギー効率の良い方法で消化できるからだ。そして寒冷な水に耐え、ほぼ世界中に生息範囲を広げることもできた。

 ほとんどの魚は冷血動物で、体温は周囲の水温に合わせている。しかし、一部の魚は温血動物であり、自ら発熱する。現代に生きる大型の鮫・ホホジロザメを含む特定のサメなどがいい例だ。

 「現代において、食性と体温の両方の面で比較可能な生物は、ホホジロザメと、ある程度ではあるがアオザメだけ。しかし私たちの研究で示されたように、メガロドンはこれら現代の頂点捕食者よりもかなり温かかったため、ユニークな存在といえる」──ニュージャージー州ウィリアム・パターソン大学の地球化学者兼古気候学者で、研究の主著者であるマイケル・グリフィス氏はこう述べた。この研究は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載された。

 研究では、メガロドンは温血動物でありながら、クジラよりも体温が低いことも分かった。

 「一説によると、メガロドンは部分的な温血動物であり、体の一部が他の部分よりも暖かかったといわれている。一方、大部分の大型哺乳類の体温はより温かく、より均一な傾向がある」──UCLAの大気・海洋科学者であり、研究の共著者であるロバート・イーグル氏はこう話す。

 おそらく史上最大のサメであるメガロドンは、約2300万年前に出現した。その後、海水温と海面が低下する中で、約360万年前に姿を消した。

 メガロドンにとって温血動物であることは、海水温の低い海域では有益であった可能性がある。

 「とはいえ、この種が絶滅したという事実は、温血動物であることの脆弱性、あるいは代償を示唆している。というのも、温血動物であるためには、高い代謝を維持するために、常に大量の食物を摂取する必要があるからだ」──古生物学者で、この研究の共著者であるシカゴのデポール大学の島田賢舟氏はこう話す。

 「気候の寒冷化によって海洋生態系に変化が生じ、海面が低下して生息域が変化した。これにより、メガロドンが依存していた海生哺乳類などの餌の種類が不足し、メガロドンの絶滅につながった可能性は十分にある」と島田氏は付け加えた。

 科学者たちは以前からメガロドンが温血動物であることを疑っていたが、今回の研究で初めて実証的な証拠が得られた。研究者たちは、メガロドンの歯の化石に含まれる地球化学的特徴を分析し、エナメル質のような組織の中で鉱物が形成される温度を特定することで、体温の指標を求めた。

 1975年の大ヒット映画「ジョーズ」とその派生作品から分かるように、メガロドンは、大衆文化では長らくホホジロザメの陰に隠れてきた。しかし、2018年の映画「MEG ザ・モンスター」およびその続編「MEG ザ・モンスターズ2」のおかげで、メガロドンは再び注目を浴びている。

 「メガロドンは、化石記録では主に歯と一握りの脊椎骨標本でしか表されていない」と島田氏。「メガロドンを超大型の怪物的なサメとして描く小説や映画とは裏腹に、その姿や生活様式はいまだに正確にはわかっていない。これこそが、『メガロドンの科学』がエキサイティングな学問分野であり続ける理由といえる」(島田氏)

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