人とヒューマノイドが共存する近未来。とあるヒューマノイドの夫婦が自身のバックアップを取ったところ、妻の本体はウイルスに感染し、このままでは壊れてしまうことに。バックアップは無事でこれを使えば直せるが、1週間分の記憶を失うことになる。果たしてそれは自分なのか──。
これは7月7日から放映開始となるテレビアニメ「AIの遺電子」第1話のあらすじだ。アニメ放映に先駆けて原作漫画の一部分もアニメの公式Twitterアカウントで公開されており、1.1万RT、4.6万いいねと注目を集めている。
作者は元ITmedia記者でもある山田胡瓜さん。漫画の続編「AIの遺電子 RED QUEEN」(秋田書店)ではChatGPTのような対話AIによる社会変革を予感させる話も描くなど、テクノロジーへの強い関心と鋭い観察眼を基に、先見の明のある近未来SFを構築している。
ITmedia NEWSではAIの遺電子アニメ化に際して山田さんとタッグを組み、AIにまつわる各領域の専門家との連続対談を実施する。
初回となる今回のお相手は、同じく元ITmediaのベテラン記者にして、「第1回 AIアートグランプリ」の最優秀作を受賞した「松尾P」こと松尾公也さん。アニメ第1話のテーマである「人格のデジタルコピー」も絡めつつ、AIの今と未来について語り合う。
初回なこともあってか話題が多いため、話題ごとに分割してお届けする。
(聞き手・執筆:井上輝一)
松尾 なんか最近胡瓜先生の予言当たってませんか?
山田 確かに、RED QUEEN(編注:AIの遺電子の続編。国など大きな社会と人とAIの関わりを描く)みたいなことを言う人が増えましたよね。
松尾 OpenAIのChatGPTに代表される大規模言語モデルが、その延長でAGI(汎用人工知能)になるのではないかと、欧州からも懸念が出ている。AGIに対して何らかのかせが必要ではという意見だったはず。これは核兵器の問題と同じという指摘があって。これどこかで見たことあるぞとw
AGIが出てくると、それが国のような人類の大きなレベルに影響を与えてくる。それで国力もかなり変わってしまう。一国や一企業がそれを持っていていいのか──という意見を言っている人もいますが、これも見たことある!
山田 書いたやつだーw
松尾 AIの遺電子の世界観って、AIにしろロボットにしろ、それは野放しではなくて国際的なレギュレーションの中でやっているってものじゃないですか。
山田 勝手になんでも作ってはいけないという。
松尾 RED QUEENの冒頭では、AIが発達しすぎて規制される世界に至るまでの道筋がちらっと描かれています。最初期のAIとして、ChatGPTのような対話型AIが出てきますよね、あの時点での作中の時代設定的には2030年くらい?
山田 そうですね、2035年くらい。ところが、現実の方が早くいろいろ出来るようになり始めましたね。
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