ITmedia NEWS > 製品動向 >
STUDIO PRO

クラウド上で動く、異色な出自の動画編集ソフト「Atomos Edit」 試してわかった先進性と課題小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/3 ページ)

» 2023年07月12日 16時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

最初からクラウドにしかない編集ソフト

 現状稼働しているクラウド編集ツールの多くは、ローカルで動くものがそのままクラウドにあるという格好になっている。一方でAtomos Editは、ローカルで動くバージョンがそもそも存在せず、最初のリリースからクラウド上にしかないという点で、特異である。何かベースになった編集ソフトがあったのかもしれないが、寡聞にして筆者は初めて見るUIだ。

Atomos EditのUI

 ユーザーはブラウザでAtomos Editのページにログインし、ブラウザ上で操作していく。とはいっても、変わったUIというわけではない。編集ツールとしては非常にオーソドックスである。難易度としては、かなり初期の「Media100」程度だろうか。変なクセもなく、すでに何らかの編集ツール経験者であれば、すぐに使えるはずだ。

 このパブリックβでは、ATOMOS製品からの直接アップロードは実装されておらず、ローカルにあるファイルをアップロードしての「お試し」ができる程度である。従って現状では、動画素材をアップロードすると、そこからファイルの最適化処理が行なわれる。これが結構待たされるが、正式リリース版ではATOMOS製品からの直接アップロードに対応するはずなので、最適化処理は行なわれないか、最低限で済むものと思われる。

 ATOMOSのレコーダーは、ローカルでの編集効率を上げるため、編集中間コーデックである低圧縮のProRESで収録することが多い。これはファイルサイズがかなり大きくなるため、クラウド経由でのファイル伝送には向かない。Atomos Editで対応できるのは、ATOMOS製レコーダーが生成するプロキシファイルである。

 本サイトの読者であればプロキシがなんたるかを説明する必要はないと思うが、今のプロキシは昔のように低解像度ではなくフルHD解像度で、低ビットレートでも画質は悪くない。従ってこのプロキシファイルを使って編集し、速報レベルならそれでよしという場合に使用するツールとなっている。

 編集結果はEDLやXMLでも書き出せるので、高解像度の収録素材が物理的に届いた時点で、それらのデータを使って別メーカーのハイエンド編集ツールで高解像度編集を行なうという流れである。

動画以外にも、EDLやXMLで書き出しができる

 クラウドツールということで、アノテーションツールも内包している。タイムラインからアノテーション用の動画を書き出し、そのリンクを共有するというスタイルだ。相手のメールアドレスさえ分かれば共有できる。

 メールが届いた相手は、メールに記されているリンクをクリックすると、Atomos Editのページへ誘導される。アカウントがなければそこで作成し、公開された動画に対してアノテーションしていく。

動画の共有によるアノテーション機能もすでに実装されている

 共有した側では、アノテーション用に書き出した動画に対してアノテーションが付けられているのを確認できる。というか、結局は同じ動画を見ているというだけである。

 前回ご紹介した「Dropbox Replay」の場合は、共有元であるDaVinci Resolveのタイムライン上に直接アノテーションが表示された。これはDaVinci Resolveのタイムライン上に設置できるマーカー機能を拡張したものだからである。

 一方Atomos Editにはマーカー機能がないので、タイムライン上に直接アノテーションのポイントを表示することができない。編集者にしてみれば、アノテーション用と動画とタイムラインを逐一見比べながら修正するのは面倒である。このあたりは、今後ユーザーのフィードバックを経て拡張されることを期待したい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.