企業の名刺管理サービスとして生まれた「Sansan」が、”名刺交換なし”でも利用できる営業強化ツールへと脱皮しようとしている。
Sansan社は8月2日の事業戦略説明会で「名刺交換の有無にかかわらず、営業を強くするツールに進化する」という方針を示した。これまでは名刺交換などですでに接点のある既存顧客のアプローチで利用する機会が多かったSansanだが、今後は全く接点のない新規顧客開拓領域に進出する。
新領域への進出に当たって提供するのは、新規顧客獲得のための営業リストの作成機能だ。
Sansanは従来から100万社にのぼる企業データベースを搭載しているが、そこに「増収増益」「営業職募集中」「新規拠点・店舗立ち上げ」といった企業の最新動向を表す95のタグを付与。ターゲット企業の絞り込みを可能にした。さらに9月中には、本社だけでなく全国の各拠点や住所を表示、絞り込みができるようにする。
続いて、絞り込んだ企業を営業リストの形でまとめ、営業担当者と共有する機能も開発していく計画だ。
Sansanはライト・スタンダード・エンタープライズの3種類のプランがあり、ユーザーの約半数がライトプランを利用しているという。新規顧客獲得機能はスタンダードプラン以上で利用でき、顧客にアップグレードを促す狙いもある。
「新規顧客開拓は営業において永遠のテーマ。これまでSansanを使っていなかった顧客にも使ってもらえる機会になる。既存顧客もエディション(プラン)が上がるなどの事業上の効果がある」(富岡圭COO)
もともとクラウド名刺管理サービスとして登場したSansanだが、昨今は名刺にこだわらず”営業DXツール”をうたい、機能を強化してきた。きっかけとなったのはコロナ禍だ。
新型コロナウイルスのまん延と緊急事態宣言によって、対面での営業活動が激減。名刺交換の機会も一気に減少し、一時はSansanへの名刺登録枚数も65%減となる事態に至った。「緊急事態宣言の解除後は14%減まで回復したが、大きなインパクトがあった」と富岡COOは振り返る。
このタイミングでSansanは、コロナ禍だからこそ必要な新機能を次々と搭載していった。オンライン名刺交換機能、オンラインミーティング用のQRコード付きバーチャル背景、メールの署名取り込み機能などがそうだ。こうした取り組みによって、コロナ禍においても、Sansanの契約件数やMRR(月間経常収益)は順調に積み上がっていったという。
「ここで実感したのは、Sansanが名刺管理にとどまらず、営業管理のデータベースとして認識されていることだ。そのため機能追加だけでなく、コンセプト自体を変更することにした」(富岡COO)。2022年4月にSansanは「営業DXサービス」という新コンセプトを掲げる。その延長線上に、今回の新規顧客開拓機能があるわけだ。
営業DXサービスの根幹は、各企業のデータベースだ。企業動向のような公開情報を整理して利用しやすくし、名刺交換やメールでのコンタクト履歴など接点情報を随時付与することで、データベース内の情報をリッチにしていくことが、Sansanの価値向上につながっていくとしている。
この数年、インボイス管理サービスの「Bill One」、契約管理サービスの「Contract One」なども投入したことで、企業との決済情報や契約情報もデータベースに付け加えられる素地が整ってきた。名刺管理から始まったSansanは、日本版営業強化サービスとして独自の進化を遂げようとしている。
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