大橋 SF小説から未来の“時間”をヨム「Sci-Fi Diving」はどのようにしてスタートしたのですか?
石田 このプロジェクトは、先ほどお話した私の自由研究である生活者の時間が基になっています。
真貝 加えて、新しい方々とネットワークを作りたいという意図もありました。われわれはプロダクトやグラフィック、Webサイトなどを手掛ける外部の制作会社などとのネットワークを持っています。しかしこれから新しいものを作っていくとき、さらなるクリエイティブな要素が必要になっていくと考えています。従来のネットワークだけでなく、今まであまり付き合いのなかったメディアアーティストや小説家、漫画家などと一緒に未来を創っていく。そうした方々とのコラボレーションの必要性があるという発想がありました。
また、新しいものを作る時にデザイン思考以外の方法を構築する必要があるとも感じていました。そこにSFプロトタイピングを活用すると、面白いことができるのではないかと考えました。
石田 われわれのワークショップはデザイン起点で、アイデアを絵や動画で表現しようとします。そうではなく、もっと面白いアウトプットを出すためのクリエイティブは何だろうと考えたとき、真貝さんがいうようにメディアアーティストや役者などとコラボレーションすることでより新しいアイデアが出ると考えました。SF小説から未来の“時間”をヨム「Sci-Fi Diving」ではSF小説になりましたが、もともとはネットワークの探索から始まったのが経緯です。
大橋 どのような構想で取り組まれたのですか?
真貝 SF作家には、Z世代が100歳になる2096年にどのようなテクノロジーが生まれ、暮らしを支え合う家族はどのような時間の過ごし方をしているのかを、まずはわれわれの意見を入れずに書いてもらうことにしました。
大橋 SF作家にはテーマだけで依頼したわけですね。
石田 そうです。「2096年の家族の時間」というテーマだけでした。
大橋 それで人間六度さん、樋口恭介さん、円城塔さんの3人が執筆することになったというわけですね。
石田 人間さん自身が20代、樋口さんが30代、円城さんが40代ということで、3世代のSF作家さんに書いていただくことにしました。テーマが家族の時間だったので、若い人が考える家族観と年配者の家族観は異なると思ったからです。
大橋 完成したSF小説を読まれていかがでしたか?
石田 世代が変わったことで大きく違うかというとそういうことはなく(笑)、作家性の違いがあったという印象です。
真貝 私はスピード感が違うと感じました。円城さんはゆっくりしゃべりかけるようなイメージ。一方、人間さんはみずみずしさとスピード感を感じました。
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