このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
サイバーセキュリティ会社の米IOActiveに所属する研究者らは「Shuffle Up and Deal: Analyzing the Security of Automated Card Shufflers」と題して、8月に開催の「Black Hat USA 2023セキュリティカンファレンス」で、カジノのカードシャッフルマシンをハッキングする手法を発表した。
カジノでは、ポーカーなどのトランプゲームにおいて、テーブルの下に置いて使用されている自動カードシャッフルマシン(Deckmateと呼ばれる装置)がある。
公平さを保つために導入しているが装置だが、今回の発表で「Deckmate 2」として知られる最新版のDeckmateを乗っ取れることが分かった。USBポートに特殊な小型のハッキング装置を接続することで、目に見えない形でシャッフルの結果を不正に操作ができるという。
Deckmate 2には、全てのカードがデッキに存在することを確認するために設計されたカメラが内蔵されており、そのカメラにアクセスすることで、リアルタイムでデッキの全順序を知ることが可能。結果を小型のハッキング機器から無線経由で近くにあるスマートフォンなどに送信できる。
このハッキングは、Deckmateがコードの変更を防ぐように設計されている方法の脆弱性をついている。通常、マシンは起動時にプログラムコードのハッシュ値(固有の識別値)を確認し、それが既知のハッシュ値と一致するかをチェックする。これにより、コードが変更されているかどうかを確認している。
しかし、研究者らはこのハッシュ値自体を変更できることを突き止めた。結果として、修正されたコードでもハッシュ値が正常として認識され、不正な変更が検出されないようにしたわけだ。
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