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「ジャマな広告」か「有料化」か ネットニュースの明日はどっちだ?小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年08月25日 10時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 子供の頃、毎朝テレビも見ずに新聞に見入っている父親を見て、何が面白いのだろうと思っていた。だが自分も当時の父の年齢になると、やっぱり朝起き抜けにニュースサイトを巡回して一通り情報を仕入れるというのが日課になっている。皆さんの多くもそういうルーティンでネットニュースをご覧になっているものと思う。

 だが最近、広告によって記事の内容が妨害されるようなケースが目立ってきた。記事へジャンプしたとたん、全面に広告が表示されて、「×」印をタップして消すまで内容が読めないとか、バナー広告画像が記事内にはみ出して本文が読めないといったことはないだろうか。

 「×」印で消せばいいのだが、出る広告によって「×」印の位置が違い、毎回探す事になる。あるときなどどこにも「×」印がない広告に出会ったのだが、よくよく探してみると上下2面広告のど真ん中にあった。まるで無理やり間違い探しのパズルに巻き込まれたかようだ。

 筆者とて商業サイトで記事を書いて糊口を凌ぐ身であるため、あまりニュースサイトの広告についてとやかくいえる立場でもないのだが、一方でコンテンツの中身を作っている立場でもある。レイアウトを壊して、常に邪魔になるように表示させる広告の出し方は、さすがにどうにかしないといけないんじゃないだろうか。広告の内容ではなく出され方によって、コンテンツの、あるいはサイト全体の評価が下がるのは、誰も望んではいないだろう。

 サイトの広告は、Google AdSenseなどのクリック報酬型が主流だ。この方法では単に広告が表示されただけでは報酬にならず、実際にクリックされた数に応じて報酬が支払われる。とはいえ、実際にモノが買われないと報酬にならないアフィリエイト型に比べれば、成果は出しやすい。

 ただこの方法は、広告とサイトのコンテンツとの関係が切れる。広告主はどのサイトに広告が出るのか知る必要はなく、サイト運営側にしてもターゲティング広告であれば、実際の消費者にどの広告が表示されるのか知る由もない。

 筆者のような文筆業は、ネットで調査して記事を書くことも多いわけだが、調べる内容は「欲しいもの」ではない。例えばソーラーパネルのトレンドを調査しているとする。するとその後にSNSやニュースサイトに行くと、コンテンツの内容と全く関係なくソーラーパネルの広告だらけになる。これなどは、ターゲティング広告のもっとも大きな弊害の1つだろう。

 旧来のメディアである雑誌やテレビへの出稿、あるいはネットでもサイト独自のバナー広告では、そのメディアやコンテンツの内容に合致するよう、双方に調整が入る。例えばPC雑誌なら、Wi-Fi関連記事の次にルーターの広告が入るとか、サッカー中継に差し込まれるCMは、サッカーをモチーフにしたスペシャル版のCMが挟み込まれるなど、広告とコンテンツで相乗効果が見込めるモデルである。

 ネット広告費がテレビを抜いたのは2019年の事で、それ以降も成長を続けている。それはコンテンツとの関係性や調整を切って、ある意味機械的に広告を売りまくった結果である。広告のすそ野が広がれば、広告コンテンツの質も変わるし、広告に関わる人の質も変わる。

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