かねてより、総務省「公共放送ワーキンググループ」で議論が進められている、NHKのネット業務の必須化は、8月10日の第12回会議で大筋の合意を見た。放送をネット上に配信する「NHKプラス」は当然として、これまで保管業務とされてきた「NHK NEWS WEB」のようなテキストベースのニュースも必須化の射程に入ってくる。
だがテキストニュースにNHKが本格参入するのは民業圧迫ではないかと反発しているのが、全国の新聞社が加盟する日本新聞協会である。必須化を避けるだけでなく、サービスの「廃止」まで求めてきている。
報道に関しては、NHKは国内最強基盤と言ってもいい。全都道府県に支局や出張所を置いて正社員を送り込み、現地採用のスタッフも多い。それらが上り下りの放送網でつながれて、地方からニュースがバンバン上がってくる。
もちろんNHKなので、テキストニュースも広告なしだ。受信料が基盤になっており、現在は誰でも無料で読める。そうなると、月額料金まで取って広告も見せる民間新聞社は一体なんなの、という話になる。もちろん情報の偏りを防ぐために、NHKに対する民間の情報は必要だ。放送における「NHK対民放連」という図式が、テキストニュースにも持ち込まれることになる。
無料でやってこられたら勝てない、というロジックであれば、NHKのネットニュースも集金すればいいという話になる。テレビや動画は見ないので受信料は払わないが、テキストニュースだけは読みたいという人はそこそこいるだろう。テキストニュース専用の月額料金が設定されれば、「新たな全国紙」が立ちあがる事になる。
そうなると真っ先に淘汰されるのは、地方紙である。全国ニュースはそれこそYahoo!ニュースで全国紙を見れば済むし、ローカルニュースの質が良くても、受益者が少なすぎる。有料化も広告掲載もやって、それでも生き残れないのであれば、残るは地方紙同士の経営統合など、リソースの整理・合理化は待ったなしである。むしろヤフーに会社を買ってくれと頼むか、NHKの下請けをやるのが一番の方法かもしれない。
ただ、そもそも新聞社が危ういのはNHKのせいなのか。カネを取って広告も見せるという虫のいいモデルでも生き残れないのであれば、それはやり方が間違ってきたのではないのか。
メディアの主戦場がスマートフォンの小さな画面になったとき、まるで敵であるかのように、広告はコンテンツを妨害し始めた。結果的に消費者の体験の質が下がっており、消費者は広告のないサブスクサービス、YouTubeやNetflixなどの動画へと流れている。広告モデルを長く続けたいのであれば、ひたすら広告のクリック数を稼ぐのではなく、もう一度コンテンツと広告のチューニングが必要なのではないか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR