ラクスルグループで、SaaS管理サービスを手掛けるジョーシス(東京都品川区)は9月6日、135億円の資金を調達したと発表した。資金は国内エンタープライズ市場の攻略や、北米・アジアなどでのグローバル展開に充てる。
資金はベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(東京都千代田区)やグローバル・ブレイン(同渋谷区)など18社から調達。これにより、ジョーシスの累計調達額は179億円になる。
国内エンタープライズ市場の攻略においては、営業・マーケティング体制の強化などに資金を注ぐ。松本恭攝社長によればジョーシスはそもそも、中小企業の利用を前提としたサービスだったという。リリース当初の時点では、エンタープライズ向けのシステムを開発・提供するだけの拡販体制やインフラが整っていなかったためだ。
しかし同社による調査の結果、エンタープライズの中にはコロナ禍によってSaaSやデジタル機器の導入が増加し、管理しきれなくなっている企業がいることが分かった。事業部ごとにSaaSや機器を導入するケースもある分、SaaS管理を実践する情報システム部の負担は、エンタープライズの方が大きい場合もあったという。
そこで調達した資金を活用して外資系IT企業からのマネジメント人材を招致。国内向けのマーケティングや営業体制を整備する。すでに、米サイバーセキュリティ企業のパロアルトネットワークスで営業本部長を経験した芹澤倫史さんなど3人がジョーシスに参画した。今後は3人をトップとして、追加の採用などを進める。
エンタープライズ市場への本格参入に先駆け、大企業の利用に耐えるインフラも整備。「ここ半年はインフラに投資してきた。開発投資のうち7割をシステムの堅牢性や安定性に投じた」(松本社長)という。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を主導し、成功した経験があるビジネスパーソンと、DXを目指す人が所属企業を問わず交流するコミュニティー「ジョーシスアカデミー」も開設する。DXに意欲のあるビジネスパーソンを集め、SaaS管理サービスへの誘導につなげるという。ただしこちらは直接利益につなげるのではなく、まずはDXに向けた意識の醸成を促す方針で運営する。
「まずはテイクではなくギブから、デジタル化自体を進めてもらえるようにする。ただ、その暁には当然SaaSの導入は増えていく。そうなったときにジョーシスが一番の選択肢にしてもらえれば」(芹澤さん)
海外では、米国、カナダ、メキシコ、シンガポール、オーストラリア、インド、韓国、その他東南アジア諸国など計40カ国でサービスの提供を始める。今後も拡大を続け、2025年末までに100カ国超での提供を目指す。こちらはまず中小をターゲットに進める方針だ。
ジョーシスは2022年2月、ラクスルが21年9月に始めたSaaS管理事業を分社化する形で設立。SaaSなどソフトウェアだけでなく、ハードウェアの管理が可能な点を特徴としている。23年9月時点で、ホンダやアンカー・ジャパンなど、300社以上にサービスを提供しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR