テレビのリアリティー番組出演者だった男性の公式Instagramアカウントに、本人の訃報が掲載された。これを見て一部メディアが男性死亡のニュースを報道。ところが翌日、本人が「私は生きている」と宣言した。SNSに投稿される情報の不確かさと、裏も取らずにそのまま報じるマスコミの危うさを見せつけた出来事だった。
「とてつもなく重苦しい気持ちで、ジョシュアの急死という悲報をお伝えします」。米ABCテレビの婚活サバイバル番組「バチェロレッテ」にかつて出演していたタレントのジョシュ・セイターさんの公式インスタグラムは8月28日(現地時間)、そんな投稿を掲載した。
「私たちはジョシュアの死に計り知れない痛みを感じています。ただ、彼がやっと平穏になれたと知ってなぐさめられています」。遺族のコメントと思わせるこの投稿の末尾には、心の健康問題に関する相談や自殺予防の相談に乗ってくれる連絡先情報も記載されていた。
芸能ニュースの米Peopleや米TMZ、米Daily Beast、米NBC Newsなどの各ニュースメディアはこの日のうちに、セイターさんが死亡したという記事を掲載した。セイターさんが心の健康の問題に苦しみ、自殺を図ったこともあると告白していた経緯を書き添えた記事も多かった。
問題の投稿がセイターさんのアカウントから削除され、本人がこのアカウントに動画コメントを掲載したのは翌29日だった。「見ての通り、私は生きていて元気です」と語るセイターさんは「私のアカウントがハッキングされ、取り戻そうと必死になっていました」「ようやく自分のアカウントを取り戻し、全力を挙げて誰が関与したのかを突き止めようとしています」と説明した。
その後メディアの取材に応じたセイターさんは、自分のアカウントから締め出されてログインできなくなり、知人の助けでパスワードを変更するなどしてアカウントを取り戻したと訴えている。
これに対し、実は死亡情報の投稿は本人の自作自演だったのではないかとの疑惑もくすぶり続ける。もちろん、本人は全面否定。自分は被害者だという主張を崩していない。
ただ、その真偽に関わらず、今回はそうした偽情報をメディア各社がそのまま報じたことで、騒ぎが大きくなった。訃報のように深刻なニュースの場合、信頼できる報道機関であれば、記事を出す前に関係者に取材して裏を取るのが普通だし、その取材ができる立場にある。
死亡記事を掲載した芸能メディアのTMZの場合、問題の投稿を見て本人や家族に電話をかけ、確認を試みたという。しかし本人からコールバックがあったのは翌日で、家族への電話は切られるか「ノーコメント」といわれるかのどちらかだったと釈明している。
結果的にメディア各社が誤報を出したことについて、英紙The Guardianはこう総括している。「今回の混乱は、特に名声と心の健康が複雑に交差する状況において、SNSの1本の投稿のみを根拠に重大発表を報道することにまつわる懸念を浮上させた」
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