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“誰でも使えるアドビ”こと「Adobe Express」に生成AIがやってきた プロならどう使う?小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(4/5 ページ)

» 2023年09月07日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

動画ツールとしてどう使うか

 今回公開されたバージョンで、動画も扱えるようになった。だがいわゆる編集ソフトのような機能はない。クリップの分割や切り出しなど、最低限の扱いに限られる。また、動画はクラウドにアップロードしなければならないので、そこまでして使うぐらいなら、何かローカルアプリを1つ買った方がいいだろう。将来的には自社クラウドサービス内で動画編集も完結し、ローカルに一切動画を降ろさないというワークフローへ進むのかもしれない。

動画用ツールも提供された

 一方でテンプレートに関しては、InstagramのリールやTikTokといったSNS向けに、簡単なアニメーションというか、コラージュ動画が作れるようになっている。動画素材はないが何か動かしたいといった場合には、レイヤーの素材に対してエフェクトをかける感覚で、簡単に動きが付けられる。このあたりは昔なつかしの「Adobe Director」的な要素も感じられる。

イラストアニメーションが豊富に提供される

 最近はSNSだけでなくWebサイトも動画埋め込みが増えているが、10秒15秒の動きの多いネタ見せ動画を作るのは、なかなか手間がかかる。だが動き付きのテンプレートを使って、文字や絵の中身をオリジナルに総入れ替えるだけで、十分オリジナルに見えるものが作れる。

アクションだけ生かして画像を総入れ替えできる

 あるいはテンプレートを分析してヒントを得るとか、本番を作る前に仮組みしてみるといった使い方もできる。いわゆる「デザインブレスト」を1人でやるツールとしても使えるだろう。

 Adobe Expressで提供するテンプレートや素材はいわゆる「有り物」なわけだが、全てAdobe Stockから提供されたものであり、著作権的にクリアになっている。Adobe Stockは何年も前からサービスインしているが、無料素材を提供するサイトはほかにもたくさんあり、なかなか強みが発揮できなかった。だがここにAdobe Express上のAIやテンプレートに取り込まれることによって、ガンと利用価値が上がった。むしろAdobe ExpressはAdobe Stockをペイするために作ったんじゃないかと思わせる連携っぷりである。

 もちろん本番コンテンツが有り物の組み合わせではプロとしてはお金が取れないので、そこはちゃんと制作するとして、コンペに出すものや絵コンテなど、パッと有り物で作ってアイデアを見せたいといったときには、ゼロから作るより全然早い。クリエイター向けツールというよりも、プリプロダクションというか、ディレクションツールという使い方が、プロの現場ではしっくりくる。

 クライアントがこの部分は本番もこれで、と言い出したときなど、身元不明の有り物だったら目を白黒させて言い訳しなければならないところだが、権利がクリアになっている素材なら安全である。

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