ITmedia NEWS > 社会とIT >

VTuberなら知っておきたい「ゲーム配信の著作権」 ガイドラインとの正しい向き合い方は? “切り抜き動画”にも注意点弁護士が解説! VTuberの法律(1/2 ページ)

» 2023年09月27日 09時00分 公開
[前野孝太朗ITmedia]

 今、飛ぶ鳥を落とす勢いのバーチャルYouTuber(VTuber)。そんなVTuberに関する法務を解説する本連載、第2回のテーマは「ゲーム配信の著作権」と「切り抜き動画の著作権」だ。

 VTuberは、YouTubeなどの配信プラットフォーム上で配信活動を行っている。単なる雑談を話す、いわゆる“雑談枠”の配信であれば、前回取り上げたアバターを除き、ほとんど著作物が含まれないため、それほど問題にはならない。しかし、ゲーム配信となれば話が別だ。

YouTube上での「VTuber ゲーム実況」の検索結果

 ゲームの著作権は開発したメーカーが持つため、配信内で無断利用すると著作権侵害となってしまう。またVTuberの配信動画では、見どころを短くまとめた「切り抜き動画」を第三者が作成・投稿することも多い。この場合のVTuber、もしくはゲームの著作権はどのように考えるべきか。

YouTube上での「VTuber 切り抜き」の検索結果

 今回は、VTuberの人気コンテンツの1つであるゲーム配信を中心に、著作権の関係を整理する。解説するのは、IT法務やゲーム・ネットコンテンツなどのエンターテインメント領域の法務に詳しい、シティライツ法律事務所(東京都渋谷区)の前野孝太朗弁護士だ。以降の段落から前野弁護士の文章。

VTuberのゲーム配信と著作権

 まず、ゲームはゲーム会社の著作物ですので、当然ながら、無断に配信内で利用すると著作権侵害となってしまいます。このように他人の著作物を利用したい場合、主に2つ方法があります。(1)権利者の許諾を得た場合、(2)法律上の例外に該当する場合です。(2)の法律上の例外は、有名な例では、引用や私的利用がありますが、一般的な配信では使いにくく、基本的に配信では(1)の許諾を検討することになります。

 ゲームについては、現在では、各ゲーム会社が配信ガイドラインを設定して、配信のルールを定め、そのルールの範囲内で自由な利用を認めることが多くなっています。そのため、ガイドラインのルールの範囲内であれば配信での利用は可能です。

 1つ注意いただきたいのは、ゲーム配信は、上記の通り、原則は、著作権侵害となり、例外的にガイドラインで許容されるという点です。つまり、例外に当たらなかった場合には、原則に戻って著作権侵害になるため、ガイドライン違反は単なる「ルール違反」ではなく、著作権侵害になります。

 ゲームに関する実況動画の投稿の例ですが、最近、ガイドラインに違反する投稿をした件について有罪判決があり、話題になりました。

ゲーム実況動画でガイドラインを無視した結果、有罪判決になった事例も

 (関連記事:“ネタバレ”ありゲーム実況で広告収入 男性に懲役2年、執行猶予5年、罰金100万円の判決

 こちらは、ゲーム以外にもアニメの動画も投稿していた事案ではありますが、ガイドラインで許容されていない利用を行いますと、原則に戻って著作権侵害となる、という点は注意いただければと思います。

 そうしますと、ガイドラインの条件を順守することが重要になりますが、ガイドラインは、任天堂やカプコンのように会社ごとに定められているケースもあれば、スクウェア・エニックスやコナミデジタルエンタテインメントのようにゲームソフト単位で定められている場合もありますので、配信対象ごとの確認が必要になります。

任天堂の配信ガイドライン

 また、配信はOKとしつつ、配信可能範囲を限定する例や、配信の際に特定の表記(コピーライトなど)を求める例、プラットフォームを限定する例、投げ銭を禁止する例などもありますので、ガイドラインの条件はしっかり確認する必要があります。

 こちらに関連して、ガイドラインについては、たまに頂く質問として「ガイドラインにOKともNGとも記載されていない事項は行っても良いのか」というものがあります。本来はゲーム会社に尋ねたいところですが、ほとんどのガイドラインでは、個別の質問を受け付けていませんので、尋ねるのは難しいでしょう。

 法的に考えますと、繰り返しになりますが、ゲーム配信は「原則は著作権侵害となり、例外的にガイドラインで許容されている」という整理になります。あくまで一般論での回答になりますが、ガイドラインに記載がない部分は原則に戻って侵害となる可能性が高く、OKと記載された部分のみを利用すべき場合が多いと考えます(逆に、ゲーム会社がガイドラインを作成する際には、できる限りそうした疑義が生じないように作成することが重要になります)。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.