ITmedia NEWS > 社会とIT >

VTuberなら知っておきたい「ゲーム配信の著作権」 ガイドラインとの正しい向き合い方は? “切り抜き動画”にも注意点弁護士が解説! VTuberの法律(2/2 ページ)

» 2023年09月27日 09時00分 公開
[前野孝太朗ITmedia]
前のページへ 1|2       

切り抜き動画で順守すべき2つのルール

 VTuberの配信については、配信の見どころを短い動画にまとめた、いわゆる「切り抜き動画」が作成・投稿されることも多くなっています。切り抜き動画と著作権の関係も少し整理しておきましょう。

 切り抜き動画は配信のアーカイブ動画を基に作成されますが、通常の配信の場合、アーカイブ動画の著作者は、VTuberになることが多いでしょう(事務所に所属しているVTuberの場合は、契約により動画の権利を事務所に譲渡する場合もあります)。そのため、切り抜き動画の作成についてはVTuber(またはその所属事務所)の許可が必要です。

「にじさんじ」を運営するANYCOLORは“切り抜き師”向けの連絡先登録フォームを開設

 また、ゲーム配信の場合、VTuberはゲームに関する権利を持っていませんので、ゲームの利用に関する許諾も必要です。つまり、切り抜き動画については、VTuberが有する著作権と、配信に含まれるゲームの著作権の両方の許諾が必要になります。

 VTuberの許諾については、VTuber(またはその所属事務所)の切り抜きガイドラインを定めることが多いところです。従いまして、ゲーム配信の切り抜き動画の場合は「VTuberの切り抜きガイドライン」「ゲームの配信ガイドライン」の双方を順守する必要があることになります。

 上記を踏まえますと、VTuberが切り抜きガイドラインを作成する際には、少なくとも、ゲームなど配信内の第三者のコンテンツについては、そのコンテンツのガイドラインなどを確認するよう促す記載を行うべきと考えます。

ガイドラインは長くとも最後まで読むべし

 今回は、VTuberの配信で最も多いと思われるゲーム配信を中心にお話をさせて頂きました。ゲーム配信については、長らくの「黙認」という状況からガイドラインによる「事前の許容」に大きく転換があってから4〜5年ほどたち、各ゲーム会社もどの範囲までどのように順守を求めるのか、どのように配信者の方に伝えるのが良いか、まだ模索しているように見受けられます。

 切り抜き動画についても、実際には、配信ガイドラインでも取り扱いがはっきりしないものもありますし、ゲームの配信ガイドラインの条件を満たさない切り抜き動画も見受けられるところです。今後のガイドラインの改定や運用にも注意が必要と考えます。

 また、配信ガイドラインは分量が多いものもあり、読みにくいと思われるかもしれません。しかし、お話しした通り、違反すると著作権侵害となってしまいますので、是非しっかり読んだうえで、配信されることをお勧めいたします。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.