このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
米Microsoftや米ペンシルベニア州立大学などに所属する研究者らが発表した論文「AutoGen: Enabling Next-Gen LLM Applications via Multi-Agent Conversation」は、複数のエージェントの会話を使用してさまざまな大規模言語モデル(LLM)ベースのアプリケーションを作成するためのフレームワークを提案する研究報告である。このフレームワークでは、各エージェントを容易にカスタマイズでき、多様なアプリケーションへの対応が可能となる。プロジェクトページはこちら。
LLMを利用する可能性のあるタスクが増加し、タスクの複雑性が増す中で、エージェントの力を増強する直感的なアプローチとして、協力する複数のエージェントを使用する方法が考えられている。
この研究では、複数のエージェントを用いてLLMアプリケーションを構築できるオープンソースのフレームワーク「AutoGen」を提案する。これは、LLMの能力を持つさまざまなアプリケーションの構築のための基盤として機能するものである。
これらのエージェントは、お互いにチャットベースの会話を通じて情報を交換し、タスクを達成するように設計されている。エージェント間の相互作用の振る舞いは、会話を中心とした計算と制御によってプログラムされる。
さらに、LLMや人間の入力、ツール、またはこれらの組み合わせを用いて、エージェントはカスタマイズされる。その結果、ユーザーは機能の一部を選択・設定することで、異なる役割を持つエージェント(例:コードを書く、コードを実行する、人間からのフィードバックを取り込む、出力を検証するなど)を迅速に作成できる。
AutoGenの評価のため、数学の問題解決やコード生成、ボードゲームなどのLLMベースのアプリケーションを作成した。その結果、既存のアプリケーションに対して、最先端のアプローチを上回るパフォーマンスの向上、開発コードの削減、手動の負担の軽減を実現した。また、AutoGenを使用することで、開発者にはエージェント間のチャットが固定のやりとりではなく、動的なパターンで進行するという柔軟性を提供した。
Source and Image Credits: Wu, Q., Bansal, G., Zhang, J., Wu, Y., Zhang, S., Zhu, E., … & Wang, C.(2023). Autogen: Enabling next-gen llm applications via multi-agent conversation framework. arXiv preprint arXiv:2308.08155.
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