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さよならVMware Broadcomによる買収完了で、企業としての存在に幕 VMwareブランドは引き続き残る

» 2023年10月30日 10時25分 公開
[新野淳一ITmedia]

この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「さよならVMware。本日(10月30日)Broadcomによる買収完了で、企業としての存在に幕。VMwareブランドは引き続き残る」(2023年10月30日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 米Broadcomは10月18日付けのプレスリリースで、30日に米VMwareの買収を完了する予定だと発表しています

 買収完了には主要各国の規制当局による認可が求められますが、現時点で中国を除く主要各国の認可が得られています。そのため、おそらく買収は予定通りに完了し、企業としてのVMwareは25年の歴史に幕を下ろすことになると見られます。

Broadcomのソフトウェア部門は「VMware」に再編成

 VMwareを買収するBroadcomは、サーバやストレージ、ネットワーク機器、スマートフォンなどさまざまな機器向けに、ネットワーク機能を実現するための半導体チップなどを提供する大手ベンダとして知られていました。

 2016年にはファイバーチャネルスイッチベンダ大手の米Brocadeを買収し、半導体分野での拡大を加速します。

 2017年には米Qualcommの買収を提案すると発表しましたが、この買収には失敗。

 その後、拡大路線はソフトウェア分野へと移り、2018年には米CA Technologies、2019年には米Symantecのセキュリティ事業買収を発表しました。

 そして2022年5月、約8兆円でVMwareを買収すると発表しました。

参考:[速報]VMwareがBroadcomに買収されると正式に発表、約8兆円で

 BroadcomはVMwareの買収が完了し次第、同社のソフトウェアグループを「VMware」にリブランドし、既存のインフラやセキュリティ関連のソフトウェア製品をVMwareの製品群に再編成すると発表しています。

 BroadcomはVMwareの買収により、エンタープライズ市場においてハードウェアだけでなくソフトウェアにも高いブランド力を持つ企業になると見られます。

VMwareのこれまでの歩み

 VMwareは1998年2月、米国カリフォルニア州パロアルトで発足しました。同社が開発したPC上で仮想マシンを実現するソフトウェア「VMware Workstation」はエポックメイキングな製品として注目されます。

 2001年には同社躍進の原動力となるサーバ向けの仮想化ハイパーバイザである「VMware ESX Server」が登場。仮想化によって複数のサーバを統合し、ITインフラを効率化するという大きな市場を生み出しました。

 2003年5月、日本法人であるヴイエムウェア株式会社が設立。その年(2003年)の12月、ストレージ大手のEMCがVMwareの買収を発表しますが、買収後のEMC傘下でもVMwareは独立した企業として存続します。

 2008年にCEOが共同創業者であったダイアン・グリーン氏から元Microsoftのポール・マリッツ氏に交代。

 2009年、CiscoとEMC、VMwareの3社が合弁でVCEを発足し、サーバ、ストレージ、そして仮想化ハイパーバイザを統合した仮想化統合基盤システムを発表。その後のITインフラにおけるトレンドを作り出しました。

 2011年にはVMwareがPaaS基盤ソフトウェアのCloud Foundryをオープンソースとして公開。

 2012年、ネットワーク仮想化ベンダのNiciraを買収。ネットワークの分野でも仮想化を推し進めることとなります。同年(2012年)、VMware CEOとして元インテルのパット・ゲルシンガー氏が着任します

参考:VMwareがOpenFlowベンチャーのNicira買収を発表

 2015年10月、DellがEMC買収を発表。2016年に買収が完了し、Dellは「Dell Technologies」となり、VMwareはEMC、Pivotal、VCE、RSAなどとともにDell Technologies傘下の企業となりました。

参考:[速報] デルがEMC買収を正式に発表(更新完了)

 2016年、VMwareはAWSと共同で「VMware Cloud on AWS」を発表し、一度は自社で参入を試みて撤退したクラウドプロバイダ市場へ再参入を実現します。

参考:[速報]「VMware Cloud on AWS」をAWSとVMwareが共同発表。Amazonクラウドのベアメタル上でVMware環境を提供、ハイブリッドクラウドを実現(更新終了)

 2019年、Kubernetesに対応した一連のソフトウェアブランドとしてVMware Tanzuを発表。

 2021年、VMwareはDell傘下からスピンオフし、独立した立場の企業へと戻ることになります。同年、パット・ゲルシンガー氏がIntelCEOに就任するためVMware CEOを退任。後任はラグー・ラグラム氏。

参考:VMwareが独立、Dell傘下からスピンオフ。その理由は、デルが借金を早く返したいから

そして2022年、BroadcomがVMwareの買収を発表、本日、その買収が完了する見通しです。

日本法人のヴイエムウェア株式会社はどうなる?

 さて、BroadcomによるVMwareの買収後、日本法人であるヴイエムウェア株式会社はどうなるのでしょうか。広報に問い合わせてみたところ、以下の返事が返ってきました。現時点で発表できることはない模様です。

 「ブロードコムによる買収につきましては日本法人でお話しできることはなく、本社のWebサイトの情報をご案内しております」

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