皆さんは「ビジネスチャット」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。IT系企業に勤めていれば「Slack」をイメージするかもしれないし、大企業に務めている人なら「Microsoft Teams」が挙がるかもしれない。しかし中小企業だと話が変わってくる。実は国産の「Chatwork」の人気が高い。
現在のChatworkの登録ID数は644万、導入社数は約42万1000社。調査会社のモニタス(東京都港区)が2022年に行った調査によると、従業員1000人以上の企業で最も使われていたのはMicrosoft Teamsだったが、Chatworkは100人未満の企業での利用率トップだ。米Nielsenの調査によると、国内利用者数が最も多いビジネスチャットはChatworkとしている。
「日本は中小企業が圧倒的に多い。中小企業に向き合い続けることが競争優位だ」──Chatworkのコミュニケーションプラットフォーム本部長を務める齊藤慎也執行役員はこう話す。なぜChatworkは中小企業に受け入れられるのか。
実は、Chatworkは先進的なITツールとしてではなく、メールやファックス、LINEを置き換えるする形で導入が進んできた。「PCが得意ではない人も安心感をもって使えるのがChatworkの特性」と齊藤執行役員。チャットというよりもメールの発展形に近い発想で作られていることがスムーズな導入につながったという。
その思想は機能面からもうかがえる。一つのメールアドレスに一つのIDがひも付き、社内でも社外でも同じIDで利用できる。Slackのように別のワークスペースを作らなくても、外部ユーザーと簡単にコミュニケーションが取れるのはメールに似ている。
日本人の慣習に寄り添う作りにもこだわったという。例えば海外発のチャットでは「@相手の名前」という表現が普通だ。ところがChatworkでは「to相手の名前」というメールに近いUIを採用している。さらに相手の名前には自動的に「さん」が付き、無礼にならないようにと体裁を整える必要をなくしている。
非同期コミュニケーションの心地良さも意識して作り込まれている。チャットはリアルタイムでも使えるが、作業に集中したいときは割り込みが入ってくることが生産性を阻害する。そのため「あえて『既読』マークは付けない。『入力中』の通知もない。相手の『ステータス変更』の通知もしない」(齊藤執行役員)と、チャットツールに振り回されないように工夫したという。
ベストプラクティスを押し付けてくる傾向が強い海外製ツールに対し、既存のツールからの飛躍をできるだけ小さくして受け入れやすく仕掛けが、Chatworkには各所に見られる。機能面で劣ると指摘される点もあるが、その配慮が中小企業に受け入れられるポイントだろう。
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