貂明朝アンチックは、普通に文字をタイプして入力するだけで、自動的にかなは明朝体で、漢字はゴシック体に変換される。ただ、マンガには独特の文字表現がある。例えば「あ」に濁点を追加した「あ゛あ゛ッ」といったセリフだ。通常は「あ」と「゛」を入力し、その間をカーニングで詰めて1文字であるかのように表現することになるだろう。
一方で貂明朝アンチックには、こうした表現を行なう為の濁点と半濁点文字がデザインされている。日本語キーボードを使ってかな入力している方は、「あ」と入力したあとに「゛」をタイプすると、1文字としてデザインされた「あ゛」が入力できるはずだ。
あいにく筆者は英語キーボードでローマ字入力なので、別の方法をご紹介しておく。MacOSの話で恐縮だが、メニューバー右上にある日本語入力アイコンをクリックして、「絵文字と記号を表示」を選択する。すると「文字ビューア」というウインドウが開くはずだ。これは入力ツールがApple純正でもATOKなどのサードパーティツールでも共通で使える。
このウィンドウの左上の「…」をクリックして、「リストをカスタマイズ」を選択。現われたウィンドウから「コード表」を展開し、「Unicode」にチェックを付けて「完了」をクリックする。
すると左側の文字一覧の一番下に、「Unicode」が追加されているはずだ。これをクリックするとUnicodeの文字が表組みで表示されるので、左の数字「3090」行の9に「゛」が、同じ行のAに「゜」が登録されている。これらをクリックすると、右側のプレビュー欄に「お気に入りに追加」というボタンがあるので、これを押してお気に入りに追加しておく。
あとは利用したいアプリの文字入力時に、「あ」と入力したあと、「文字ビューア」の「お気に入り」に登録された「゛」と「゜」をダブルクリックすると、「あ゛」が入力される。
ポイントは、「あ゛」全体で1文字になったフォントが変わって入力されるということだ。濁点だけ消そうとしても文字全部が消えるだけなので、ご注意願いたい。頻繁にこれらの文字を入力したいという人は、出てきた「あ゛」をコピペして、「あてんてん」などとして単語登録しておくと良いだろう。
ほかにもマンガ特有の表現で、長い音引きがある。「な、なんだってーーーーー!!?」みたいなヤツだ。一般のフォントでは、音引きをいくつ追加しても切れ切れの破線になってしまうわけだが、貂明朝アンチックでこれを入力すると、1本に繋がった長い音引きとなる。
これは、最初の1文字は書き出しの部分に「飾り」があるが、連続で入力した2つめ以降は前後に飾りのない音引きが入力される。最後の音引きは、先頭は飾りなし、末尾のみ飾りありのフォントが入力されるので、全体で繋がった1本の音引きに見えるというわけである。これは音引きだけでなく、波線でも同様の処理が行なわれる。
もう1つマンガ特有の表現に、「!」や「?」マークの連続という表現がある。これも一般のフォントで連続すると幅がどんどん広くなってしまうだけだが、貂明朝アンチックで連続入力すると、複数が1文字となったフォントに変換される。ただし!や?は全角入力になっている必要がある。
どんなバリエーションがあるかは、Photoshopではメニューの「書式」- 「パネル」 -「字形パネル」を開き、「全ての異体字」を選択して一番下までスクロールすると、このバリエーションを確認する事ができる。
マンガ特有の表現は、一般的な日本語表記から外れるところが多いが、それがゆえに非日常を表現することが可能なのであり、こうした言葉の「遊び」が奥行きのある文化を形成するエンジンとなる。これまでは個別に文字のカーニング等で時間を変えて形成していたものが、フォントを選び変えるだけで可能になるということで、相当な省力化になることだろう。またフォント自体も美しく、読みやすいものに仕上がっている。
マンガという文化から生まれた貂明朝アンチックだが、これからは「文化のゆりかご」として長く使われることだろう。
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