我々日本人にとっては馴染み深いマンガなだけに、フォントに特別注意を払ってこなかったが、よくよく見ると、ひらがなとカタカナは明朝体、漢字だけはゴシック体で構成されている。皆さんもお手持ちのマンガを、今一度ご覧になっていただきたい。これに気がついていない人は多いと思う。
マンガのセリフで、いったいいつ頃からこうした明朝とゴシックの交ぜ書きが行なわれるようになったのかは定かではないそうだが、かつて活字を拾ってセリフを切り貼りしていた時代からすでに行なわれていた表現手法だという。恐らく漢字の視認性の良さや、当時の印刷技術と紙質では、明朝体の漢字特有の細い横線の刷りに不安があったからだろうと思われる。
現在ではこうしたマンガ独自の表現手法のために、モリサワなどから専用フォントが出ている。このため、貂明朝アンチックの登場によって既存のワークフローまで変わることはないだろうと予想される。Adobeでは、商業誌に掲載されているプロの漫画家以外のクリエイター、昨今はSNSにマンガを投稿するアマチュアも多いが、そういう人のために無償で利用できるマンガ向けフォントとして開発した。ゆくゆくはこういうクリエイターが商業誌デビューした際にも、スムーズに移行できるだろう。
貂明朝アンチックを利用するには、Adobe Creative Cloudのホームから「Adobe Fonts」を選択するか、Adobe Fontsのサイトへ行って貂明朝アンチックを検索する。「ファミリーを追加」をクリックすると、貂明朝アンチックの6ウェイトがアクティベートされる。
Adobe製品以外でも使いたい場合は、Adobe Creative Cloudの「アプリ」からリソースリンクの「フォントを管理」をクリック。クラウドダウンロードのアイコンをクリックして、OSにインストールする。
Adobeでフォントが扱えるツールならどれでも使えるが、他社のアプリから使用するためには一度アプリやOSを再起動して、フォントのデータベースを更新させたほうがいいだろう。
貂明朝アンチックは漫画用ということで、横書きにも縦書きにも対応する。全部で6ウェイトもあるのは、フォントファミリーとしてはかなり多い。Heavyまで用意されているので、書籍の表紙などにも利用できるだろう。
無料デザインツール「Adobe Express」と合わせてご紹介しようと思ったが、調べてみるとAdobe Expressは縦書きをサポートしていないようだ。そこで今回はAdobe Photoshopで試してみる。
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