国内勢のパブリッククラウド事業者として初めて、政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」入りを果たしたさくらインターネット。ガバメントクラウドを巡ってはこれまで、国のデータを海外事業者ばかりに預ける不安や、国内事業者の成長を妨げる可能性が取りざたされていたこともあり、同社への期待は大きく、株価も急伸している。
一方、すでに大きなシェアを誇るメガクラウドの牙城を崩せるのかといった不安は残る。“ガバクラ入り”を果たしたさくらインターネットは今後、どんな戦略で市場を攻略していく方針なのか。田中邦裕社長にメールでのショートインタビューを実施した。
──ガバメントクラウドの採択、おめでとうございます。現在の率直な感想を教えてください
田中社長 日本のデジタルインフラを支える企業として、これからも期待に応えていきたいと思っています。当社は、2025年度末までに機能を充足させる計画を提出し今回ガバメントクラウドの条件付き認定を受けました。それを完遂させる覚悟を持って取り組みます。
──2021年に実施したインタビューでは、ガバメントクラウドに国産勢がいなかったことについて「日本のIaaSベンダーはまだまだ」といった回答がありました。当時と比べ、さくらインターネットおよびさくらのクラウドがどう成長したと捉えていますでしょうか
田中社長 今回の認定は、2025年度末までに技術要件をすべて満たすことを前提とした条件付きの認定です。そのため、認定に向け専門部隊の設立および開発強化に向けた人員増強をこれまでも行ってきましたが、まだまだ道半ばであるといったところに変わりはありません。
──同じく、日本のIT企業やIT業界が、どのように変化してきていると感じているか教えてください
田中社長 ITがIT企業の専売特許であった時代は終わり、非IT企業もITを活用していくことでビジネスモデルをデジタルビジネスへと変化させています。
この流れは加速していき、今後は、あらゆる企業がIT企業となると考えています。そのため、パブリッククラウドの活用はどんどん広がっていき、国内外問わずに(企業がそれぞれに)最適なパブリッククラウドを利用することが望ましいと考えています。
──ガバメントクラウドの主要な用途である「自治体システム標準化」についての質問です。現状、ベンダーの人材や技術的な都合もあって、自治体のシステム移行先としては、AWSが選ばれている印象があります。さくらのクラウドはどのようにこの状況に食い込んでいく方針でしょうか
田中社長 既存の海外ベンダーが、パートナーエコシステムや有資格者の数で優勢ですが、当社としても同様にエコシステムを構築し、さくらのクラウドを開発してもらえるパートナーを増やしていくことで、採用事例を増やして行きます。
当社としては、まずは先行する事業者のサービスと組み合わせて使ってもらうという観点が大事であると考えています。一例として、データを国産のクラウドに保管したいというニーズに対応できるバックアップソリューションの提供などを通じて一部でも採用頂けるよう、取り組んでいきます。
ベンダーロックインを防ぐ取り組みを、クラウド事業者側が積極的に行うことが重要であり、他の事業者からの移行を補助するツールの開発や移行サポート支援体制の強化に取り組んでいきたいと思います。
──さくらインターネットは現在、AI関連サービスなども強化していますが、政府・自治体も同様にAI関連の施策を強化している様子が見られます。今後、何かシナジーが生まれる可能性があるのでしょうか
田中社長 こちらに関しましては、回答を差し控えさせていただきたく存じます。
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