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子ども3人以上での「大学無償化」が“ヘンテコ設計”に感じられるワケ “教育の無償化”がもたらす功罪小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年12月14日 18時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 12月5日に東京都の小池百合子知事が、高校授業料の無償化政策から所得制限を撤廃することを明らかにした。現在都立高校は国の援助で完全無償化、私立高校では国の援助に都が上乗せする格好で年間47万5000円を上限として支援しているが、一定の世帯年収以下に限るという制限があった。これを撤廃するというわけである。

 続く12月7日には、政府が3人以上の子どもが居る多子世帯を対象に、2025年度から子どもの大学授業料などを無償化する方針を固めたと、報道各社が一斉に報じた。こちらも所得制限なしである。

 教育費の負担減は、子育て世代にはありがたい。今回の話はITとは直接関係ないものの、IT人材がこれから生まれる教育現場を考える上で大事なトピックなので、この場で整理してみたい。

「高校無償化」で起こる地殻変動

 すでに就学しているお子さんを持ちの方はご承知だと思うが、一般に言うところの「教育の無償化」について、整理しておこう。

 基本的に無償といわれているのは「授業料」の話である。義務教育である公立の小中学校に関しては、憲法第26条2項に基づき、全国で無償となっている。また義務教育の教科書については別途、教科書無償措置法に基づいて無償となっている。

 その他、教育に必要な教材、例えば体操着、ドリル、問題集、絵の具セット、習字道具といったものは無償ではない。ただ自治体によっては独自の条例等によって、何らかの補助があるところもあるだろう。

 高校に関しては、2010年施行の「高等学校等就学支援金制度」により、公立校は国が授業料を全額負担することで、実質無償化されている。私立高にも、上限はあるが支援金が支給される。ただこれは国の制度であり、公立・私立ともに所得制限がある。つまり公立校でも、所得が多い世帯は有償となっている。

 東京都で行われる高校無償化の所得制限撤廃とは、都が上乗せして支給しているぶんの支援金の話である。従って、所得制限内ですでに補助を受けている世帯は、これまでと同じである。この制度で恩恵を受けるのは、所得が多いためにこれまで補助が受けられなかった世帯だ。

 全ての子どもが高校までの教育が受けられるように、という方向性では評価されるところではある。だが実質所得が多い世帯では高校進学もそれほど負担ではない家庭もあるはずで、さらにそこを援助するのだ、という事が分かると、また違った景色が見えてくるのではないだろうか。

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