12月21日、毎年恒例となるJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)による会長記者会見が行われ、電子情報産業の世界生産見通し等の資料が公開された。2020年から始まった世界的パンデミックにより、ここ数年はその影響による需要変動が大きかったが、2023年はそれよりも2つの戦争や世界的インフレ傾向、AIの登場が大きなインパクトを与えたようだ。
今回はJEITA公開の資料をベースに、23年の振り返りと今後起こるであろう社会変革の様相を予測してみたい。
まず世界における日系企業のポジションを確認する。電子情報産業の世界生産・日系企業生産額推移を見ると、世界生産額はここ10年で増減はあるものの、おおむね右肩上がりで成長している。GDPでみればさすがに2020年に落ち込みを見せたが、翌年以降の上昇カーブを見ると、2020年の落ち込みを無視できるレベルで成長した。
一方日系企業の生産額は、2013年以降横ばいから徐々に減少している。シェアで言えば2013年には全体の15%を占めていたが、10年経過しておよそ8%にまで後退している。生産額で言えば大きく減らしているわけではないが、世界の成長カーブに付いて行けてない現状が見える。
JEITAではこれを、海外企業との競争激化や、インターネット動画配信サービスの普及によるAV機器市場の縮小、世界で高成長の分野で日系企業の伸びの低さと分析している。昔から強みの分野はあるものの、世界のトレンドには乗れていないという事であろう。このあたりをもう少し細かく見てみよう。
世界生産額と日系企業シェアを見てみると、日本企業の独壇場ともいえるのは撮像機器、すなわちカメラ系やプリンタ、映像記録再生機器などのAV機器である。一方世界企業で成長が著しいアウトソーシング・その他サービスや携帯電話、ソフトウェアでほとんどシェアが取れていないことが分かる。
特に深刻なのは、映像記録再生機、いわゆるレコーダ系の衰退だ。上記のグラフは、2021年末の分析記事でも同様に引用しているが、日系企業のシェアは撮像機器に次いで第2位の72%であった。
日系企業の世界生産見通しで内訳を見てみると、2022年で前年伸び率-17%、2023年(見込み)で-20%となっている。AV機器の中でも極端に衰退した部分だ。これはJEITAの分析通り、競合に負けたわけではなく、ネット配信により需要がなくなってきたという事だろう。
ハードウェアはおおむねに不調に終わった23年だが、ソリューションサービスに関しては世界成長に合わせる格好で追従できているのは安心材料だ。また24年には半導体不足の解消が見込めることや、世界的なインフレへの対策が功を奏しつつあることから、今後はハードウェア部門も復調するものと予測している。
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