このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
慶應義塾大学の杉浦裕太研究室に所属する研究者らが発表した論文「衣服を介した視覚・触覚提示可能な腹部装着型ウェアラブルロボットの提案」は、腹部に装着するウェアラブルロボットを使用し、衣服を介した視覚・触覚提示手法を提案する研究報告である。このロボットのデザインは、漫画「ど根性ガエル」に登場するキャラクター「ピョン吉」から着想を得ている。
このロボットは、ユーザーが腹部に装着し、その上から衣服を着用する。ロボットはLEDディスプレイを搭載しており、物理的な動きとLEDディスプレイからの透過光により視覚的な提示を行う。また、ロボットの動きにより衣服を引っ張ることで、着用者に触覚的な提示を提供できる。
プロトタイプでは、既存の2足歩行ロボットである「KHR-3HV22 Ver.3」を使用している。KHR-3HV22は22個のサーボモータを搭載しており、ユーザーは頭が下を向くようにしてこのロボットを着用する。ロボットの足裏部分にはLEDマトリックスが付いており、LEDの光が衣服を通じて透過する。
プロトタイプでは、着用者の感情拡張、ロボットから着用者への感情表現、ナビゲーションの3つのアプリケーションを開発。喜怒哀楽に対応するロボットの動きとLEDディスプレイのパターンにより、着用者の感情を拡張し、円滑なコミュニケーションを促進することが可能である。
また、足の角度を変更してLEDディスプレイの角度を変えることで、着用者自身に対しても感情表現ができる。さらに、ロボットは足の角度を水平方向に変更可能で、着用者に左右の方向を示すことで、ナビゲーションの役割も果たす。これらのアプリケーションは、ロボットと人間の相互作用を深めることを目的としている。プロジェクトページはこちら。
Source and Image Credits: 山本 匠, 吉村 凜, 杉浦裕太. 衣服を介した視覚・触覚提示可能な腹部装着型ウェアラブルロボットの提案. WISS 2023: 第31回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ https://www.wiss.org/WISS2023/
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