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TBS「news23」に放送倫理違反 BPO「映像の見た目を優先した」 JA共済“自爆営業”報道で

» 2024年01月12日 13時31分 公開
[ITmedia]

 BPO(放送倫理・番組向上機構)は1月11日、TBSテレビのニュース番組「news23」で放送倫理違反があったと公表した。農業協同組合(JA)の共済営業をめぐる報道で内部告発者の身元がばれ、退職に追い込まれたとされる件について「放送局が負うべき責任を軽んじた対応であった」と判断した。

 news23は、2023年1月に放送した番組内で、JAで共済営業の過大なノルマ達成のため、職員やその家族が必要のない契約を結ぶ、いわゆる自爆営業が横行していると報じた。2人の職員の証言を伝える際には顔をぼかし、声を変えていたものの、ぼかしの範囲が小さく服装や体型、身に着けていた腕時計などはそのまま映っていた。インタビューを行った部屋の家具や公園の様子も分かる状態だった。

 このためBPOには、職員に会ったことがあるという視聴者から「放送を見て取材に応じているのが誰であるかすぐ特定できた」という声が寄せられたという。BPOは報道の原則である“取材源の秘匿”が損なわれた疑いがあるとして、23年8月に審議入りを決定。関係者へのヒアリングなど調査を進めていた。

 調査により、内部告発者が使用を控えてほしいと頼んだ映像を失念して放送するミスがあったことも分かった。さらに取材の担当ディレクターが映像編集も一人で行い、事前の映像チェックは十分ではなかったことが判明。他にも過去の再現映像に事実と異なるナレーションを付けていたり、内部告発者の1人が自爆契約した件数や年間支払額も実際とは異なっていたりした。

BPOの意見書の一部。内部告発者への配慮に欠け、映像の見た目を優先したと指摘している

 BPOは、TBSの取材を「映像の見た目を優先した形で進められており、内部告発者の状況や真意をくみ取った取材とは言い難い」と指摘。「情報源の秘匿という本来放送局が負うべき責任を軽んじた対応であった」として放送倫理違反と判断した。

 これを受け、TBSテレビは「BPOのご指摘を真摯に受け止めます。報道機関としての基本原則を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の皆さまの信頼回復に努めてまいります」としている。

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