速暖性と安全性に加えてもう1点、ダイキンがこだわったのがデザイン性だ。ライバルとなる海外メーカーの電気暖房機と対抗するために、デザイン性は欠かせなかったという。
「構造上、セラムヒートシリーズには銀色の反射板が欠かせません。しかしこの反射板が、高級感を損なっているのではないかという懸念がありました。そこでガラスパネルなど、さまざまなデザインを検討しました。開発期間の丸2年間は、ほぼずっとパネルを検討していたと言っていいと思います。最終的に暖かさと表面温度を抑えた安全性、そしてデザイン性でパンチングパネルを採用しました」(森上さん)
器具から発生した熱が前面外側まで到達する率である「透過率」を見ると、セラムヒートが約77%なのに対しハイブリッドセラムヒートは約50%と下がっている。つまり直接的な暖かさはセラムヒートが上だが、その代わりにハイブリッドセラムヒートは、高い安全性とデザイン性を実現したわけだ。
ダイキンのセラムヒートシリーズは、他社の電気暖房機器よりも高価だ。一般的なカーボンヒーターやセラミックヒーターの多くが2万円台で購入できるのに対して、セラムヒーターは3万円台後半、ハイブリッドセラムヒーターに至っては6万円台とハードルは高い。
しかし同時に、海外メーカーの電気暖房機器は5万円超の高価格帯でも売れ続けている。ここでポイントとなるのが、安全性とデザイン性というわけだ。実際に量販店などで小さい子どものいる家庭から支持を集めているほか、高齢者世帯向けに購入するケースも多いという。
実際にハイブリッドセラムヒートを使ってみたが、セラムヒートの芯から暖まる感覚はそのままに、前面パネルが熱くならないことは安心感があった。暖房のパワーは、透過率の違いもあってセラムヒートが上だが、1〜2mの離れすぎない位置に設置すればしっかりと暖まる。
暖冬で始まった今シーズンは、電気暖房器具業界の全体の売り上げは、前年比約75%(ダイキン工業調べ、量販店頭販売から推定)だという。しかし、この前年比マイナスのなか、6万円台と高価なハイブリッドセラムヒートは、予定台数の出荷が完了している。一部量販店からは追加オーダーもあったそうだが、部品調達などの関係で今シーズンの増産は残念ながらできなかったため、あとは店頭在庫のみというヒット商品になった。
光熱費の高騰により暖房器具に対して省エネがより一層求められる昨今、エアコンのように部屋全体を暖めるのではなく人をピンポイントで暖める暖房器具に注目が集まっている。なかでもセラムヒートは、遠赤外線が人をしっかり暖めるため、消費電力も抑えられる。電気暖房器具としては高価だが、省エネ性の高さや安全性、デザイン性の高さから、長い目で見ておすすめの1台と言えるだろう。
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