ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
STUDIO PRO

AWS、放送業界を分かってきたじゃないか…… Inter BEE展示で感じたこと小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/2 ページ)

» 2024年01月29日 15時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
前のページへ 1|2       

米国で広がるライブクラウド制作とクラウドマスター

 ライブクラウド制作と名付けられたコーナーでは、ソニーの「M2L-X」が動作していた。会場内のブース映像と、LiveUと協力して同社オフィスからの映像をクラウドで受け、それをクラウド上のソフトウェアスイッチャーで切り替える。

ソニー「M2L-X」を使ったクラウドスイッチング

 同様のデモはソニーブース内でも行われていたが、こちらは操作レスポンスに1秒弱の遅延があったのに対し、AWSでのデモでは遅延は1〜2フレームとかなり抑えられていた。オペレーション用に使用する映像には、実際に操作される映像とは違う低遅延の軽量データを使用しているという。

 さらにクラウド上ではSRTやNDIが混在しているが、これは入力ソースの違いもさることながら、クラウド上のツールがそれぞれ得意不得意があるため、どうしてもコンバートする必要があるのだという。得意なフォーマットなら安定性も増し、遅延量も減る。こうしたノウハウは、さすが餅は餅屋というか、インフラサービスとして一番突っ込まれがちなところにコストをかけて展示している。

現状のシステムでは複数のプロトコルが混在する

 すでに米国ではライブクラウド制作が広く使われるようになっているが、コンテンツの規模によってシステム規模やスタッフ数などをシビアに切り分けているという。つまり高視聴率が見込めるものにはコストとスタッフをつぎ込み、そうでないものは3番組を1人のオペレーターで回すといった、オペレーション側の拡張縮小が重視されている。

 ブースの目玉ともいえる展示が、クラウドを使ったマスターシステムである。ARIB準拠のマスターからの出力を、実際にTSストリームに変調して民生用テレビに出すというところまでシステムが組んであった。

日本の放送フォーマットで構築したクラウドマスター

 系統図を見ると、SRTとCDIの混在型となっている。CDIはAWSが開発した非圧縮映像信号をクラウドサービス間で受け渡していく技術で、Cloud Digital Interfaceの略称だ。旧来使われてきたSDI(Serial Digital Interface)を意識したネーミングであるという。

クラウドマスターの構成図

 現時点では各サービスが得意なプロトコルでつないでいるため、変換系統が多い印象だが、最終的にはCDIかNDIに統一したシステムになるだろうと予想されている。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.