ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

スマホと衛星の直接通信、本当に可能なのか?房野麻子「モバイル新時代」(1/3 ページ)

» 2024年02月28日 09時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 日本でも衛星とスマホの直接通信に対する期待が高まってきている。2023年8月に米SpaceXとの業務提携を発表したKDDIは、Starlinkの最新衛星とスマホとの直接通信サービスを、2024年内をめどに提供するという。

2023年8月に開催されたKDDIの発表会(左から同社社長の高橋誠氏とスペースXのトム・オシネロ氏)

 まずはSMSなどのメッセージ送受信から始め、データ通信や音声通話も順次対応予定としている。このサービスでは既存の携帯電話の周波数帯を使用するため、今現在利用されているau(UQ mobile、povoも含む)スマホのまま衛星と通信が可能だという。

 KDDIの4G LTEの人口カバー率は99.9%を超えている。しかし、日本は1万6000以上の山々と1万4000以上の島々を有しており、光ファイバー回線の敷設が必要な基地局の設置が、地理的条件により困難な場所が存在する。そうした地域では、Starlinkをバックホール回線とした基地局を順次展開しているが、国土における4G LTE面積カバー率は約60%にとどまっている。

 衛星との直接通信が実現されれば、地上の基地局がない海でも山でも、基地局がダウンするような災害時でもつながる。Starlink自体は2024年1月に発生した能登半島地震でも利用されており、避難所のWi-Fiであったり、ドコモとKDDIが共同で派遣した船上基地局のバックホール回線としても使われていた。

NTTドコモとKDDIが運行した船上基地局でも、バックホール回線にStarlinkが使われていた
「Starlink for Business」を展開するNTTドコモでも、避難所へのWi-Fiスポット設置にStarlinkを活用した

 ただし、屋内では通信できず、雨が降っていたり分厚い雲が覆いかぶさっていると、現状通信が不安定になってしまう。とはいえ「空が見えれば、どこでもつながる。日本のどこにいても、つながらないがなくなるように。これをわれわれがかなえていきたい」とKDDIの高橋誠社長が語ったように、提供エリアにおいてブレイクスルーをもたらすのは間違いない。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.