衛星を使った通信サービスはNTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)と呼ばれ、Beyond 5Gも見据えながら世界的に整備が進んでいる。高度約3万6000kmにある静止衛星よりもかなり低い、高度2000km以下の低軌道に多数の通信衛星を打ち上げ、協調して動作させる「低軌道衛星コンステレーション」を構築することで、高速、低遅延な通信を実現している。
静止衛星を使った通信サービスには、「インマルサット」やNTTドコモが提供している「ワイドスターIII」などがある。1つの衛星で広範囲なエリアをカバーできるが、衛星まで距離があるため端末側には通信用の大きなアンテナを用意する必要がある。
低軌道衛星は、多数の衛星で「面」を作る必要があるものの、静止衛星と比べて地表までの距離が短く、非常に大きなアンテナを使うことで、スマホに強い出力で電波を発射。一方で、スマホから出力される微弱な電波も巨大アンテナでキャッチし、信号を増幅処理することで、スマホとの直接通信を可能にする。
SpaceXでは、スマホと直接接続する「Direct to Cell」を実現すべく、カスタムチップと巨大フェーズドアレイアンテナを搭載した直接通信対応の衛星を開発。高性能な無線受信と高出力送信を実現し、スマホと直接LTE通信が可能になるという。
SpaceXのStarlink以外にも、スマホとの直接通信を提供すると宣言している米AST SpaceMobileには楽天が出資。2026年にスマホとの直接通信を始めるとしている。米Amazonが取り組んでいるProject Kuiperは、23年11月にNTTとNTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、スカパーJSATと戦略的協業に合意。英OneWebはソフトバンクが出資しており、4社とも低軌道の衛星を利用することになる。
ソフトバンクはOneWebの他、成層圏に無人機を飛ばして基地局とするHAPSにも取り組んでいる。HAPSについてはAirbusも取り組んでおり、NTT、ドコモ、スカパーJSATの4社で早期実用化に向けて研究開発の推進を検討する覚書を22年1月に締結している。
スマートフォンメーカー単独で衛星通信企業と手を組むこともある。米Appleは、米Globalstarの衛星と直接通信することで緊急SOSが送れる機能をiPhone 14シリーズから北米向けに提供している。
総務省の資料を見ていると、Starlinkの衛星の総数が他を圧倒しているのが目立つ。衛星が多いということは基地局が多いということ。地上の基地局でも基地局が多ければカバーできるエリアが広く、より多くのデータを分散してさばける。現状、Starlinkが衛星ブロードバンド通信を世界中で提供できているのも、この衛星の数が支えているものと考えられる。これだけの数の衛星を打ち上げられるのは、スペースXの本業がロケット開発と宇宙空間へのペイロードの輸送だからだ。
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