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スマホと衛星の直接通信、本当に可能なのか?房野麻子「モバイル新時代」(3/3 ページ)

» 2024年02月28日 09時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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まだ残されている課題

 現在はStarlinkが他社を一歩リードしている印象だが、スマホと直接接続してデータ通信や音声通話をするためには、従来の衛星よりも巨大なアンテナを搭載した、先ほどの直接通信対応の衛星が必要になる。ただ、スペースXのコマーシャルビジネス担当上級副社長 トム・オシネロ氏によると、現時点で打ち上げに成功している「Starlink V2 mini」でも、SMSなどメッセージ送受信の提供は可能という。

 SMSならiPhone 14シリーズですでに直接通信が一応実現している。やはり期待されるのは直接通信によるデータ通信と音声通話だろう。楽天モバイルとAST SpaceMobileが23年4月に市販のスマホを使った直接通信試験による音声通話に成功しているが、本サービスとして開始されるまでにはまだ2年ほど掛かる。

 Starlinkの新型衛星の打ち上げは24年1月に成功したばかり。24年内のサービス開始時はSMSなどメッセージの送受信からスタートするという。順次対応予定としている音声・データ通信をいつカバーするかについては、この新型衛星の打ち上げ状況次第といえる。 

 どちらも現在割り当てられている周波数を使うため、地上の基地局との干渉も気になるところだ。KDDI取締役執行役員の松田浩路氏は「これからの実証実験や衛星側の能力による。干渉しないようにするのがポイント」と語っていた。

 ちなみに、国際電気通信連合(ITU)の2023年世界無線通信会議では、NTN実現のための周波数が検討され、HAPS用の周波数として1.7GHz帯、2GHz帯、2.6GHz帯の3つが全世界で、700MHz帯については日本を含めた多数の国で利用することが決定された。特に、スマホと衛星の直接通信のための周波数については、2GHz帯を使用することで現在総務省で検討が始まっている。

衛星コンステレーションによるスマホとの直接通信は2GHz帯を使うことで検討が始まっている

 電波の話になれば法律面の環境を整えることも必要だ。5Gビジネスデザインワーキンググループの報告書では、「衛星と携帯電話との直接通信などの新たなサービスの導入に当たり、適切な免許制度の在り方等に関する検討が必要」としており、今まさにその検討を進めていくのだろう。

 スマホとの直接通信まで、まだ超えるべきハードルは残っているが、実現が見えてきているのは確かだ。

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