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数字300桁を適当に言う→数列から96%以上で誰が言ったか特定 数列には個人の「クセ」が現れるちょっと昔のInnovative Tech

» 2024年04月05日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

ちょっと昔のInnovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。

X: @shiropen2

 ドイツのシャリテ・ベルリン医科大学などに所属する研究者らが2021年に発表した論文「A cognitive fingerprint in human random number generation」は、無作為に生成した数列に個人特有のパターンが含まれることを示した研究報告である。その数列において、同一人物が書いたか、それとも別人が書いたかを判定するシステムを開発し、証明した。

数列には個人のクセが出るという研究

 115人の参加者を対象に、1〜9までの数字を使って300桁のランダムな数列を2回生成してもらう実験を行った。参加者には、数字の出現頻度ができるだけ均等になるよう意識しながら、なるべく予測不能な数列を生成するよう求めた。

 そして、2つの数列の類似度を定量化する独自の手法を用いて分析したところ、わずか300桁の数列だけでも、同一人物が生成した数列と、別人が生成した数列を、96.5%の高い精度で見分けられることが分かった。

一見ランダムに見える数列にも、実は一人一人に固有の特徴が表れていることが明らかに

 この現象は、個人によって好む数字の並びや、避ける数字の並びが異なることに起因しており、1週間後に再度実験を行っても、その傾向は変わらなかった。つまり、数列に現れる規則性は、その人固有の認知的な「指紋」のようなものだといえる。

 また、この個人差が、単なる認知能力の違いでは説明できないこと、また、個人になじみ深い数字の並び(電話番号や郵便番号、生年月日など)が影響しているわけでもないことを確認した。つまり、ランダムだと思って数列を生成するとき、無意識のうちに独自のルールや癖が混入しており、この認知指紋は、一人一人の頭の中にある、数列を生成するアルゴリズムそのものを反映していると考えられる。

Source and Image Credits: Schulz, MA., Baier, S., Timmermann, B. et al. A cognitive fingerprint in human random number generation. Sci Rep 11, 20217(2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-98315-y



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