バリラックスの「デジタイム」というメガネ用のレンズは、老眼鏡という道具の不便さを、かなりの部分で解消する、デジタル時代の新しい「作業用メガネ」なのかもしれない。
このレンズを使ったメガネを作ってから約1カ月の試用で感じたのは、そのことだったのだけど、これが中々伝えにくい。それは、メガネという視力補正器具が実際のところどういうものか、分かっているようで分かっていない人は、案外多いのかもしれないからだ。
例えば、「老眼はどんどん度が進むから、メガネを作るタイミングが難しい」というのは、確かに事実だ。ただ、老眼の度が進むことと、近眼の度が進むことは、根本的に違うということに気がついていない人は多いのではないだろうか。
そもそも、メガネというのはカメラのレンズとは違って、「メガネ+肉眼」の組み合わせで機能する道具なのだ。なぜ、メガネが一枚のレンズで、遠くから近くまでピントが合うのかというと、それは、目がオートフォーカス的な機能を持っているから。
つまり、メガネはカメラでいうと、レンズというより、コンバージョンレンズに近いのだ。例えていえば、遠くが見えないからテレコンバーターを使うのが近視鏡、近くが見えないからワイドコンバーターを使うのが遠視鏡といった感じ。
一方で、老眼鏡は目の調整能力が衰えて、そのオートフォーカス機能が弱まっているから、そのピントが合いにくい範囲内の、もっとも見たいと思う距離──例えば本が読みたいなら、本までの距離、PCなら画面までの距離などにピントが合うように作る。
そして、老眼が進むというのは、近くや遠くが見えなくなるのではなくて、調整能力がさらに弱まることをいう。だから、「老眼鏡を作った当初は、本が楽に読めたけど、最近は見えにくくなってきた」といった現象が起きるが、それは同時に、「でも、PCの画面は見やすくなったんだよね」という状況も引き起こす。
つまり、最初に作った老眼鏡は、本を読む距離に合わせてあるけれど、目の調整能力がまだ残っているから、その前後もある程度ちゃんと見える。ところが調整能力が弱まると、本の距離では近過ぎて見えにくくなり、少し遠くの画面の方が見やすいという状況になるのだ。
こうなると、本の距離と画面の距離のどちらを優先するかを選んで、メガネを作るか、両方見たければ、累進レンズのメガネを作る必要が出てくる。多くの人は、ここで老眼鏡を諦めるか、本の距離に合わせたものに作り直すだろう。メガネに詳しい人は、そこで「近々両用」と呼ばれる累進レンズのメガネを作ろうと考える。
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