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スマホ専用ゾーン付き 老眼鏡の「見えにくい」問題をかなり解消してくれる「デジタイム」はデジタル時代の“作業用メガネ”か分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

» 2024年05月27日 13時10分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「近々の累進レンズは、レンズの上の方に奥行きの視界を作っていくレンズなんです。なので、目の中心のところは手元が見えやすい度数になっていて、その上が奥行きが見える度数へと変化します。その設計だと、顔を上げただけだと奥行き側は見えなくて、少し上目遣いになると奥行きが見えやすくなります。では、デジタイムはというと、上目遣いしなくても奥行きが見えるというのが大きな特長になっています。レンズの度数分布のレイアウト自体は、近々の累進レンズとよく似ています。ただ、瞳孔の中心、正面を見た時のレンズの中心部は奥行きが見える度数になっています。PCの画面などは正面か、少し下向きで見ますから、これなら上目遣いをしないでも見えるわけです」と井上さん。

 中々、難しいけれど、簡単にいえば、レンズの中心は少し離れたものが見える度数になっているということだろう。つまり、近くを見る場合は、目は下を向くし、目自体も少し中心に寄るけれど、正面でものを見る場合、多少は奥行きがある部分を見る。だから、通常の近々レンズだと、近くを見るための度数に合わせているレンズの中心を、PCの画面などがハッキリ見える度数に合わせているということなのだろう。ノートPCを使っていても、首は下向きになるけれど、目はレンズに対して正面を見ている。

 「デジタイムでは、目の中心から上全体が同じ度数になっているんです。なので、目の前に広がっている視界全体が安定した度数になっています。通常の近々の累進レンズでは、この途中で度数が変っているから、違和感を覚えるんですね。四角いものが台形に見えたりとかが起こるんですけど、ここの度数変化がないから真っ直ぐ見えます。度数が安定している領域が広いから、正面で見た時に奥行きが見えていて、しかも歪みがないというのが、自然に見える秘密ですね」と井上さん。

スマホを見る時の視線の角度や目の寄り具合は、大体決まっているので、「デジタイム」では、その部分に「スマホフォーカスゾーン」というスマホ画面をクリアに見るための度数が入っている

 その上で、中心より下に、より近いもののための度数が入って、手元用の度数がさらに下に用意されているという構造になっているらしい。この一番下の手元用の度数が、「スマホフォーカスゾーン」というスマホを見やすくするための特別な領域になっている。このレンズの名前が「デジタイム」という名前になっている由来ともいえる領域だ。

「デジタイムでは、普通の姿勢のまま正面で見たものは、その距離がちゃんと見えて、手元は勝手に目が寄ってくるし、スマホを見る角度というのは結構決まっていることが、バリラックスが持っているデータから分かっているので、そこに『スマホフォーカスゾーン』を付けるというような設計になっているんですね」と井上さん。

 聞いてみると、やけにシンプルな解決方法なのだけど、井上さんによると「今までの常識からすると、ちょっと大丈夫ですか? っていうような、変なレンズになっています」という。この点については、私用の「デジタイム」を合わせてくださった、目黒の伏見眼鏡店店主××さんも「かなり変わったことをしているレンズなんですよ」と仰っていた。

「デジタイム」は、作業の環境や用途に合わせて、手元から80cmまでをカバーする「Near」、手元から100cmをカバーする「Mid」、同じく220cmまでをカバーする「Room」の3種類がある。これ以上の範囲をカバーしたい場合は、バリラックスXRなどの遠近両用の累進レンズが必要となるが、遠くが見える分、近くのクリアさは失われる。手元で細かい作業をするなら「Near」がオススメ

 「バリラックスの設計思想は、人がメインなんです。人がPCで仕事をする時にはどういう姿勢でいるのか、どういう風に目を動かすのか、というところからレンズを作っていくんです。PCって意外に正面で見ているし、角度にしてもそんなに下がらない。6度くらいしか下がらないというデータを持っているし、その際の人の目の動きみたいなものを調べていったデータも持っているので、そこからレンズが設計出来るんですね。自然にその人が仕事をしやすい姿勢を取った時、見やすくなるようなレンズ開発をやっているバリラックスだから作れたレンズだと思うんです」と井上さんは言う。

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