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スマホ専用ゾーン付き 老眼鏡の「見えにくい」問題をかなり解消してくれる「デジタイム」はデジタル時代の“作業用メガネ”か分かりにくいけれど面白いモノたち(2/5 ページ)

» 2024年05月27日 13時10分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 この「近々両用」というのは、例えば、目からPC画面までの40cmくらいの距離と、本までの30cmくらいの距離の2つの度数を基準に合わせたレンズで、近い2つの距離で合わせるから「近々両用」という。これを、向かい合った人の顔までの80cmくらいから、本の30cmに合わせるのが「中近両用」、遠くから近くまで満遍なく見えるようにするのが「遠近両用」である。

 両用というから、何となく二焦点のレンズみたいだが、度数はレンズの中でグラデーションになっているから、正式には「累進度数レンズ」と呼ばれるわけだ。いつまでも「遠近両用」とかいってしまうから、大昔のレンズの真ん中からパッキリと遠く用と近く用が分かれたメガネのイメージが生き残ってしまう。

 「バリラックスの累進レンズは、1959年にベルナール・メトナーズ博士という方が開発しました。彼のお父さんはメガネ職人さんで、真ん中に線が入った『バイフォーカル』と言われるタイプのレンズを入れたメガネを掛けて仕事をしていたそうなんです。それが使いにくいというのを父親から聞いていたメトナーズ博士が、青年時代から試作を繰り返して作っては、父親に試してもらって、完成したのが世界最初の累進レンズだったんですね。つまり、累進レンズって、60年代になる前からあったんですよ」と、ニコン・エシロールの井上陽奈さんが言うように、もう随分前に、線が入ったり、レンズの中に小さい別の度数のレンズが入ったりといった、いわゆる二焦点タイプの遠近両用メガネは、古いものとなっていたのだ。

 それが知られていないな、と感じたのは、例のメガネの中にスイッチで別の度数の部分が現れるというタイプのメガネに注目が集まった時だったのだけど、あれはレンズ内に別の度数を出したり引っ込めたりできるという技術自体はすごかったので、注目されたこと自体は間違ってはいなかったと思う。とはいえ、前述したように、メガネは目の機能と合わせることで威力を発揮するデバイスなので、カメラのレンズ的な発想とはあまり相性は良くないのだ。

 ともあれ、そうやって累進レンズは進化を続けてきたのだが、その一つの到達点が、以前にこの連載でも紹介した「バリラックスXR」なのだ。創業当時から、実際に使う人、必要とする人に試してもらいながらレンズの開発をしていたメーカーだから、とにかく膨大なモニターデータを持っている。そのデータと最新技術と世界的に行われる試用者によるモニタリングが、視線の動きに合わせた遠くから近くまで、自然な視界を得られるメガネを実現している。

老眼による作業中の不具合を解消するレンズ

 「バリラックス デジタイム」は、それらの技術やデータの一部を利用して、「デジタル時代の作業用メガネ」に特化したレンズということだが、実際に使った印象としては、デスクワークとスマホチェックに必要な視界全体に効くスーパー老眼鏡という感じだ。

左が「デジタイム」のレンズ内の度数のレイアウト例。右は一般的な累進レンズによる「近々両用」の度数のレイアウト例。デジタイムは、半分から上の度数を変えないことで広く自然な視界が得られるようになっている

 例えば、PCでの文章入力時、画面上の文字がシャープに見えていて、ちらっと視線を下げてキートップの刻印を確認も普通にできる。作業中にLINEが来て、スマホをパッと見ると、そこの文字もやっぱりシャープに見える。しかも、目の端の方までちゃんと歪まずに見えるから、視線移動しても疲れないし、瞬間的に目を動かすだけでも、ちゃんと見たい文字が見える。

 この何がすごいかというと、まず、普通の老眼鏡では、前述したようにスマホかPC画面か、どちらかの専用メガネになる。また、近々の累進レンズだと、PCの画面は上目使いで見ることになるし、対面に座る人の顔まではハッキリ見えなかったりする。また、どうしても周辺が歪む。

 そういった、老眼による作業中の不具合の色々をメガネで解決してしまおうというのが、この「デジタイム」というレンズなのだ。価格も、「XR」ほどではなく、両眼セット4万5100円からなので、一般の累進レンズより少し高い程度。

距離によって見える姿勢が決まってしまう通常の累進レンズだと、同じ作業は同じ姿勢で行う必要があって、疲れの元になりやすい

 では、どのようにして、このレンズを実現しているのだろうか。基本的な構造はいわゆる近々の累進レンズに近いとは思うのだけど。

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