プロの世界では、1980年代半ばにデジタル時代に移行していく。最初のデジタル伝送は、コンポーネントからスタートした。つまり、アナログ・コンポーネント信号をデジタルサンプリングして記録するところから始まっている。なぜならば、当時のカメラセンサー(撮像管)からはアナログ信号しか取り出せないからである。
Y/B-Y/R-Yのアナログ3信号をそれぞれサンプリングするわけだが、そのサンプリング周波数の比率を、Yは4、B-Yを2、R-Yを2とした。いわゆる4:2:2システムの発祥である。
1986年に発表、翌年販売を開始したデジタルVTR「DVR-1000」は、デッキ部分の下に巨大なプロセッサが付いていた。デジタル化されたY/B-Y/R-Y信号、すなわち3本のケーブルを使うデジタル・コンポーネント信号を伝送できたほか、下のプロセッサ部ではアナログ・コンポーネント信号を直接入力することもできた。プロセッサ部でAD変換するわけである。
スイッチャーシステムもデジタル・コンポーネント対応のものが登場し、この信号処理方式は現在も多くのスイッチャーの基礎となっている。
その一方でパッチベイは、3本の映像信号のほか、水平同期信号と垂直同期信号の計5本をつなぎ換えるのは煩雑であるだけでなく、アナログと違ってつなぎ間違えると全く絵にならないところから、マルチコネクターを使用するようになっていった。ただ後述するシリアル・デジタル伝送方式の登場により、マルチケーブルを使うパラレル・デジタル伝送方式は、比較的短命に終わった。
一方で1988年に登場したのが、コンポジットデジタルVTR「DVR-10」である。DVR-10からは、ケーブル1本のデジタル・コンポジット信号が入出力できるほか、アナログ・コンポジット信号も入出力できる。つまり従来のメインであったアナログ1インチVTRをこれに置き換えることができる。システムはアナログだが、VTRだけはデジタル、というハイブリッドシステムが生まれた。
放送局への納品も、アナログの1インチテープからDVR-10用のD-2カセットテープへと変わっていったことから、テレビ番組制作でメインに使用された。
D-2はアナログ1インチVTRよりもダビング特性は良かったが、画質的にはデジタル・コンポーネント方式(D-1)のほうが上であった。D-1システムはフルデジタルで組まれることが多かった事から、ダビングによる画質劣化がなく、テレビCM合成などで主力となっていった。
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